週刊あはきワールド 2019年7月17日号 No.626

全力で治す東西両医療 第39回

ともともクリニック全力カンファレンス中継(28)

~膝裏の痛みの臨床推論・医大生に答える②~

 (1)石川家明(2)園田幸恵 


◎第38回 ともともクリニック全力カンファレンス中継(27)
      ~災害地へ一緒に行った医学生へ答える~
      (石川家明・園田幸恵)
◎第37回 ともともクリニック全力カンファレンス中継(26)
      ~症状から、東西両医学の臨床推論、そして選穴へ②~
      (荒川和子・佐藤もも子・木村朗子・石川家明)
◎第36回 ともともクリニック全力カンファレンス中継(25)
      ~症状から、東西両医学の臨床推論、そして選穴へ①~
      (荒川和子・佐藤もも子・木村朗子・石川家明)
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(1)石川家明:TOMOTOMO(友と共に学ぶ東西両医学研修の会)代表
(2)園田幸恵:自治医科大4年

 6月13日から16日までの4日間、第2回目「災害医療・地域医療研修会@川内村プロジェクト」を終えて、帰宅したその晩から、一緒に参加してくれた医学生から質問メールが届きました。前回に引き続き、今回はその2回目です。眼から鱗であったと書いてくれた膝裏の奇妙な痛みを臨床推論の手法で紐解きます。

■医大生からの質問メール、その2

 こんばんは

 川内村への訪問は2度目となり顔馴染みの方も増え、お互いに前回よりもリラックスしてお話できました。

 盛況で絶え間なく多くの方がいらっしゃったため、たくさんの方とお話でき、脈診や舌診をさせていただく機会を得られ、先生方の問診や診察、治療の様子を見学でき、知識も経験も未熟な私にとって有意義な時間を過ごすことができました。

 今回は問診に加えて身体診察を行うことを目標に取り組み、主に肩の可動域の確認や膝の熱感や圧痛点の模索について教えていただきました。

 変形性膝関節症の方の膝では関節の変形のために想像以上に関節裂隙が下方に偏位すること、肩を挙げる動作の中にも主体的なものと他動的なものがあり関節拘縮の有無を診るために慣れるまではどちらも確認する必要があることなどを知り、慣れと経験と知識の活用方法の難しさを痛感しました。

 ある日、69歳の女性で6カ月前からの左膝痛と3カ月前からの右肩痛を訴える方が来訪されました。肩関節については理容師をしておられるため右の肩関節を動かす動作が多いことが原因ではないかとご自身で考えておられました。

 膝関節は痛みを訴える割に圧痛点はほとんどなく、変形もなく、熱感と腫脹が強いのが特徴的でした。私は整形外科疾患を考えていましたが、その場で体温を測ってもらい、追加の問診として発熱、皮膚症状、眼症状を聞く必要があることを教わりました。隠れた内科的疾患を見逃さないためです。今回は膠原病やその類縁疾患を疑っての判断でした。視野の狭さによる見逃しの怖さを知り、身が引き締まる思いでした。

 個人的に今回一番驚いたことは、ある筋肉の形態に起因する痛みについてでした。石川先生が、伏臥位状態でいる変形性膝関節症の方の膝窩の圧痛点を調べてマーキングしておられました。マーキングの分布を見ると、関節裂隙でも筋付着部でもなさそうで私には無秩序なものに見えました。

 少し怪訝な表情で見学しているのを察知した石川先生が「これは半膜様筋の付着部だよ」と解説してくださいました。半膜様筋は大腿後面の内側で、半腱様筋の深側にある膜のように扁平な筋肉ですが、停止は脛骨の内側顆だけというのが私の認識でした。しかし実は半膜様筋の停止部はヒトデの足のように5カ所にも分かれていました。解剖学の本にも多くのネット画像にも掲載されておらず、目から鱗でした。この方は5つに分かれて細くなった停止腱が膝変形により牽引されたり、屈伸動作で負荷がかかるなどして痛みが出てしまったのではないかと考えられました。真実を知ることは難しいと思いました。

・参考URL
http://www.kojimachi-shiraishi.com/jpc/RONBUN/ronbun4/ronbun4.html
2019/6/30参照

 夏が近づき、川内村では盛んに草刈りが行われていました。そのような作業は比較的涼しい早朝から始められるそうで、朝6時には一仕事を終えるそうです。そこから朝食をつくり仕事に出かけると聞き、肩や膝の痛みを抱えながら働く真面目な村の方の様子を伺えました。

 村で採れたウドやコシアブラ、猪鼻などの山菜を差し入れしていただき、調理法も様々でどれもとても美味しくいただきました。

 最終日には、福島芳子先生にモリアオガエルの生息地である平伏沼に案内していただきました。大切な卵が水中で食べられないように、高い木に産みつける特徴的な卵塊を見せていただきました。美しい沼で涼しげに鳴くモリアオガエルは愛らしく、温かみのある風土を肌で感じました。

 村に赴くたびに、川内村の方の逞しさと福島先生の奥深い愛に気づかされるのでした。

 笑いの耐えない快活な現場で、楽しみながら実りある時間を過ごさせていただきました。貴重な学びとたくさんの経験を与えてくださったともともクリニックの皆様、川内村の皆様、ありがとうございました。

■一般教科書に載っていない!の経験こそ、臨床の醍醐味

 さっそく、第2通目のメールを有難うございました。園田さんが「個人的に今回一番驚いた」という患者さんですが、文字通り「眼から鱗の経験」をしてくれて良かったなと思います。こういうのって、実践の場だから経験できる、感動できることです。教科書に書いていないことはたくさんあるし、将来の進む道によっては、全く触れない疾患も出てきそうです。でも、触れない疾患って考えてみたら、認知していない疾患のことも多いのですね。つまり、知らないから世の中に存在しない疾患になって目の前を素通りしてしまうことがあります。園田さんがいみじくも書いてくれた「視野の狭さによる見逃しの怖さを知り」ですが、本当に日常臨床のなかにそういう怖さが潜んでいますね。知らないことで、一期一会の患者さんにご迷惑をかけないように、私たちは日々研修するしかないなと胆に銘じています。

 でも、今回のは、ちょっとまた違っていて、存在は分かっていて、一般の教科書には記載されているけど、臨床的深みがなく、あるいは教科書であるゆえ省略されて記載されている類の話です。ついつい教科書にはすべてが書いてあると思い込んでしまいがちですが、実は教科書にすべてが書いてあるとは限らないのですね。これも、臨床の現場に出てみるとよく分かります。

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