週刊あはきワールド 2019年7月17日号 No.626

「未病を治す」~身体の歪みをなおす~操体法シリーズ 第2回

操体法総論(前編)

~医療における操体法の位置づけと革新性ならびに操体法の三法則~

 (1)鹿島田忠史(2)稲田稔 


◎第1回 操体法にサブタイトル付与を!(鹿島田忠史・稲田稔)
 
(1)本文執筆:鹿島田忠史(誠快醫院)
(2)豆辞典執筆:稲田稔(稲田みのる治療室)

 2019年6月19日発刊の本誌No.622「操体法にサブタイトルを」の記事で、サブタイトルとして「快感原理」を提唱した。その後何人かの人から意見をいただいたが、思ったよりもこのサブタイトルへの抵抗が強いようだ。その理由は二つあり、一つは「快感」がどうしても性的なイメージを連想させることである。二つ目は「原理」が「イスラム教原理主義」が一時ひんぱんに報道された影響か宗教的なニュアンスが含まれるようになってしまったことだ。

 いずれにしても、他に適切な用語があれば、それに切り替える方が望ましいので、「快感」の代わりに中性的な「快適」を「原理」の代わりに「理論」を使うことを提唱したい。広辞苑によれば「理論」は、『個々の事実や認識を統一的に説明することのできる普遍性をもつ体系的知識』とされており、広い適応範囲を持つことからもサブタイトルにふさわしいのではないだろうか。

 したがって以下「快適理論の操体法」といった表現を使うこととする。

医療とは一体何をしているのだろう

 前号で医療界での操体法の認知度について、残念ながら高いとは言えないと記した。今回は医療における操体法の位置づけとその基本法則について考えてみたい。

 まずごくごく基本的なことから話を始めよう。そもそも、医療(治療)とは一体何をしているのだろうか。実は、医療がしているのは、対症療法、時間稼ぎ、予防医療、原因療法の4つだけにすぎない。もちろん,医学研究という医療を支える学問もあるが、治療行為に限って言えばこの4つに限られる。

 いうまでもないが、わが国でこうした医療を構成しているもっとも大きな柱は健康保険制度である。日本の健康保険医療は、WHO(世界保健機関)が世界一と折り紙をつけるくらい制度的には優れている。なぜ世界一と評価されるかというと、誰でも、どこでも、いつでも一定水準以上の医療を受けられるからだ。誰でも医療を受けられるという意味では高福祉国家と言われる北欧諸国や英国は条件を満たしている。しかしこうした諸国では、紹介がなければ専門病院を受診できないとか、高度な検査や治療が順番待ちになるなど多くの制約がある。日本ではこうした制約はほとんどなく、結果として大病院での三分診療を招いている。医療水準についても金に糸目をつけなければアメリカが上かもしれないが、平均的な水準はかなり高いであろう。

 では、日本の医療に何の不満もないかと言えば、そんなことはないと読者も答えるであろう。そうした不満がどこから生じるかというと、要はきちんと治してもらえないのが最大の理由だと思われる。

 なぜ治せないかの原因は、最初に上げた4つの治療の中で予防医療、原因療法の比率が非常に少ないからだ。国立国際医療センター臨床研修科医長の尾藤誠司先生は、著書『医者の言うことは話半分でいい』(PHP研究所)の中で保険医療で対処できる割合は医療・健康サービスの3割程度と断言している。逆にいえば、保険医療では病気の治療や予防の7割は何ともならない、ということである。筆者が言うのも変だが、自分が行っている医療でどうにも治せないのになぜか平然と「老化現象です」と宣言する医者がいる。医療以外の業種ならば、依頼されたことが実現できないときには「申し訳ありません」と詫びるのが普通なのにだ。こうした態度を取る医者がどうして出現するのかだが、それは宗教にも似た医学教ともいえる考え方からくるのである。

 「医学教」では、神は統計学で、経典は医学論文、布教者は学会の代表者、信者は臨床医だ。この「宗教」では臨床の統計数値が絶対で、ある治療の治療統計成績が高ければ、医療者なら誰でも納得し、ひれ伏す。その意味でもっとも敬虔なる信者は『患者よ、がんと闘うな』(文春文庫)など多数の著書のある近藤誠医師だろう。彼の主張の唯一絶対の根拠は医学論文のデータで、その裏に医療者の医学信仰があるが故に反論されにくいのである。

操体法は医療におけるパラダイムシフト

 しかし、先ほども述べたように保険医療で根治が期待できるのは、たかだか3割。残りの7割に該当したときにはどうすればよいのだろうか。こうした要望に対応してきたのが、代替医療や民間療法、漢方などの医療である。これら一群の医療は、医学教のお約束である医学論文の裏づけに乏しい実情がある。それにはいくつか理由があり、まずこうした業界は健康保険や製薬会社などの経済的な裏づけがなく、十分な研究ができない。加えて、治療家と医者側に妙な対抗意識があり、進んで協力する医学研究者も見つけにくいのだ。

 一種敵対関係に近い医療界を統一的にまとめ、立場の違いを超えて効率のよい病気治療と健康寿命延長を実現するにはどうすればよいだろうか。そうした要望に応えうる革新的理念が快適理論の操体法といえる。

 なぜ操体法が医療に革新的な変化すなわちパラダイムシフトを引き起こしうるかというと、医療における主体性を根本から逆転するからである。現在の医療では医療行為の内容を決める主体は、医師を代表とする医療サービス提供側である。それに対し、操体法では医療内容の最終的決定を下す主体は患者さんにあり、医療者は可能な選択肢を示したり、医療技術を提供する従属的な立場となるからだ。このとき患者さんが最終的な決定を下す基準となるのが精神的・肉体的な本人の快不快の感覚である。こうした視点は今までの医療にはまったくなく、その意味で操体法は医療に新しい地平を示す革新的な理念と言える。

操体法の三法則

 以上、医療における操体法の位置づけやその革新性について述べた。次に操体法の具体的な内容をまとめてみたい。

 筆者が橋本敬三先生の著書やNHKの放送ビデオに加え直接伺った話などから、操体法のエッセンスを抽出すると、次の三項目が法則として上げられる。それは、

第一法則=快適理論:気持ちよかったは体にいい
第二法則=自己責任要素:息・食・動・想+環は同時相関相補性を持つ
第三法則=慢性疾患の可逆性:慢性疾患の悪化と回復は、ゆがみ→機能→器質、の順で起きる

 それぞれの法則について、詳しく解説しよう。
 

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