週刊あはきワールド 2019年9月4日号 No.632

◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例 File.65-1

運動器系疾患はこう治す!(前篇)

~体表の陥下・弛緩に起因する運動器系疾患の治療~

つよし.治療院・和ら会 川腰つよし 


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1.基礎の不具合は上物を不安定にする! これは当たり前!

1)人体は動く立体構造物
 どのような構造物も地球上で生活する限り、ニュートン物理学の影響を受けることは周知の事実ですよね。人体のバランスも然りで、万有引力の影響を受けずに存在することは不可能です。

 立体構造物を例に出せば簡単でしょう。基礎が狂えば上物が狂わないはずはありません。そんな意味で考えると、足部がもっとも影響が大きく、膝、股関節、腰椎、胸椎とだんだん影響が小さくなるでしょうし、逆に狂いの大きさから考えるなら最も上にある頚椎がもっとも大きな影響を受けることになるでしょう。

2)右足関節捻挫を例にすると…
 たとえば、よくある事例として右足関節捻挫をしたとしましょう。皆さんはどのように歩くでしょうか?

 軽度であれば、荷重をすることは可能でしょうが、程度がひどくなればなるほど、荷重をせずに歩くような動作となるでしょう。右足の荷重をせずに歩く動作を実際に行ってみると分かるとは思いますが、相対的に左足の荷重が増えて負担が増えることとなります。同時にこの動作により、右足の股関節荷重は減少して可動域も前方中心となり、後方への可動が少なくなることになります。

 このような下肢の荷重バランス・可動域変化は、この上に乗っている体幹のバランスにも変化を及ぼします。脊柱起立筋は腰椎付近で左側中心とならざるを得ず、右側は不慣れな右足の操作に終始して、脊柱付近から離れた部分の筋群が働かざるを得なくなります。その方の体癖※により異なるのですが、体幹下部でのアンバランスを代償するため、体幹上部ではより大きな傾きとなって、特定の筋肉への負担が起こることとなります。

和ら会では、身体の使い方として代表的な4つ(上下、左右、捻れ、前後)の体癖に分類して臨床に応用している。

2. 不具合が生み出す上物の不安定は多くの痛みの元凶

1)たかが傾きではあるが…
 例に挙げた右足関節捻挫の影響で起こる代償動作は、治癒とともに減少することは理解できるでしょう。治癒期間の長短はあれ、何とか動いているうちに徐々に両足の荷重差は戻り、動作は受傷前の状態に近くなっていきます。そして、多くの方は、痛みが徐々に減少するにしたがって、不具合はなくなって数年すると怪我をしたこと自体を忘れてしまいます。

 初めて来院された方を医療面接・身体観察のうえ全身切経をしてみると、足部の受傷の影響による姿勢の傾きがそもそもの原因と考えざるを得ない事例に出会うことは多くあります。

 過去に出会ったケースで言えば、膝痛・股関節痛・腰痛・背部痛・頚部痛といった運動器系疾患に近いものから、胃痛・腹痛・頭痛・めまい・耳鳴り・難聴といった臓腑系・機能性疾患、あるいは結果的に心療内科系疾患が結果的に快方に向かった例もあり、たかが姿勢の傾きとはいえ多様な病態の原因となっていったと思われるものがあります。

2)傾きを誘発する原因はいろいろ… とはいえ…
 もちろん、傾きを誘発する原因は捻挫ばかりではありません。うおのめ・靴ずれといった皮膚疾患から、打撲、骨折といった運動器系疾患、痛風・リウマチ・敗血症といった全身疾患まで、さまざまな要因で左右荷重の不均衡は生じる可能性があります。

 主訴にいたる機序はさまざまな因果関係が考えられますが、鍼灸師として何ができるのか判断したうえで対処を考える必要があります。ここで判断すべき内容が、病機・病勢・病位です。ではこれらの判断をするうえで、日常臨床で行う医療面接・診察・診断・治療はどうあるべきでしょうか?

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