週刊あはきワールド 2019年10月2日号 No.636

◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例 File.66-1

腰痛はこう治す!(1)

~天・地・人治療会の基本治療~

日本鍼灸理療専門学校 光澤弘 


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 腰痛は鍼灸治療において肩こりとともに多くみられる疾患です。この腰痛について、私の所属する天地人治療会における治療の考え方、治療法、そして症例を紹介したいと思います。

 天地人治療会の基本的治療の流れは、「病の根本は臓の精気の虚」によるとのことから、はじめに六部定位脈診法で基本証を決定し、本治法により臓の精気の虚に対して補法を行います。次に愁訴への治療を行います。症状に応じて、身体を縦方向に捉えアプローチする「経絡系統治療システム(VAMFIT)」と、人体を横方向の「天」・「人」・「地」に分けて捉え、身体各部に天地人に対応させる「天地人治療」を行います。 

 それでは今回のテーマである「腰痛」についてお話していきたいと思います。

1.人間における腰部の特徴

 人間は二足直立歩行という、腰には非常に負担のかかる姿勢で生活しています。解剖学的に腰部の骨は5個の腰椎が重なって前弯を呈しています。腰椎は頭を支える頚椎の何倍もの大きさで、縦に積み重なり体の支柱となっています。腰椎の周りには筋や内臓があるだけなので大きな可動性が生まれ、前屈、後屈、側屈、回旋などの運動が可能となります。そうした動きを可能にするために腰椎には大きな突起がいくつもあり、多くの筋が付着しています。ほかに、腰部の安定には背部の脊柱起立筋、広背筋が、腹部の安定には腹直筋や内外の腹斜筋、腹横筋が働いています。よって脊柱だけでなく背筋、腹筋の状態が腰痛に関与しています。

 さらに、内臓の反応が腰背部にもあらわれることから消化器、循環器、泌尿器、生殖器の疾患が腰痛の原因となることや精神状態も腰痛の要素として念頭に置く必要があります。

2.現代医学的な病態把握の必要性

 21世紀の現代において、できる限りの現代医学的な病態把握は必要で、患者との信頼関係のみならず訴訟においても重要な意味を持ちます。腰痛の現れ方も疼痛部位、急性、慢性、痛みの種類、痛みの程度、運動時痛、安静時痛、発熱、体重減少、腹部症状、膀胱直腸障害などと多岐にわたります。鍼灸治療の適応をわきまえ、治療にあたることが肝要であると考えます。すでに現代医学の診療を受けている患者に対して内容が理解でき、医師の診察を勧める必要があるものには医師に状況を説明できるかなどは、治療法とは別に必要なことです。

3.腰痛の東洋医学的捉え方

 東洋医学では腰部を腎の領域として捉えます。腎の精気の虚に寒熱が作用し経絡の異常として愁訴が現れます。また、腹部に症状がある場合は募穴や背部、ことに兪穴(霊背兪)に反応がみられます。急激な運動による腰痛は筋肉によるのもが多く、比較的治りやすい病態です。

 背部の経絡は膀胱経や督脈ですが、兪穴も存在することは、腰背部は二重の支配を受けているということになります。さらに臓腑と経絡は属絡関係があり、経絡の体内流注は複雑で、その愁訴部位の所属経絡がそのまま異常を起こしているとは限らないため、腰痛を起こす原因が腎や膀胱とは断定できません。腰痛という膀胱経上の症状であっても、他の臓腑経絡の影響が出ている可能性があること、そのために原因となる経絡の異常を見極め治療することが重要となります。

4.治療後の姿

 人にはそれぞれ臓の精気の虚の状態があり、そこに内因、外因、不内外因という病因が侵襲することで病理の虚が生じます。『素問』「調経論篇六十二」や『霊枢』「刺節眞篇七十五」にみられるように、陽が強いと熱を生じ、陰が強いと寒を生じさせます。そしてその寒熱が作用して臓腑・経絡に波及し、愁訴を生じさせます。

 患者は愁訴が楽になることを期待して治療を受けに来ます。鍼灸師は患者の表情や体の動き、脈診や腹診、切経など、すなわち望・聞・問・切で情報を得て判断し、治療し、愁訴を取り除こうとします。

 治療後によく耳にするのは「息をするのが楽になった」「周りが明るく見える」という言葉です。治療後の患者の姿は、患者の眼に神が宿り血色がよく、落ち着いて表情が穏やか。背筋が通り力みなく、呼吸に連動した体の滑らかな動きがあって、観ていて気持ちがいい。筋も弾力があり、可動域を滑らかに動く。このようなことではないでしょうか。つまり、治療後の姿としてこのような状態に近づいてくれば、いい方向に向かっていると考えられます。『黄帝内経霊枢』「九鍼十二原篇一」に「効之信、若風之吹雲、明乎若見蒼天」とありますが、患者自身も、そして治療者も気持ちの良いものなのです。

5.天地人治療会の治療

 天地人治療会の基本的な治療法は、脈診法による証決定、本治法による蔵の精気の虚の是正、そして愁訴を発生させる寒熱波及経絡への「経絡系統治療システム(VAMFIT)」を用いた治療です。さらに人体を横方向に天・人・地に分けて捉え、身体各部に対応する「天地人治療」を行っています。

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