週刊あはきワールド 2019年10月23・30日合併号 No.639

新刊紹介

『からだに触れる からだで触れる』(朽名宗観著)へのいざない

~「推薦の辞」より~

 横田観風 


 
 間もなく、『からだに触れる からだで触れる~「生命共感」への手がかり・足がかりとして~』(朽名宗観著)を上梓いたします。ここでは、本の紹介を兼ねて、本書から横田観風氏による「推薦の辞」を転載させていただきます。(編集部)

推薦の辞

からだに触れる からだで触れる~「生命共感」への手がかり・足がかりとして~(朽名宗観著)  『論語』里仁第四に「吾が道は一以てこれを貫く」とある。孔子の「一」とは、「忠恕」即ち「真心からの他人への思いやり」である。痛み苦しむ患者を前にして、一本の鍼、一点の灸によって治療せんとする私共の心の内に、どれほどの「忠恕」の気持ちがあるかが問われる一句であろう。

 著者の宗観氏は、我が門の俊逸であり、現在「いやしの道協会」の三代目会長として、会員たちを牽引する立場にいる。彼は大学を卒業する頃から気流法の創始者、坪井香譲師のもとで熱心に修行を続け、現在も指導員として講習の場に携わっている。途中、縁あって鍼禅の道を歩む私の門に入り、熱心に鍼灸治療の研鑽に励むと同時に、平林僧堂の野々村玄龍老師に通参し、禅も行じていた。それ故に、彼の根底にはまず気流法で体感して来た身体知の世界観があり、それが後に修した鍼禅の世界と混然一体となって彼の中ではたらき、彼を突き動かしているものと思われる。

 私が創成した「いやしの道」は、正確には「鍼灸による日本的ないやしの道」という。なぜ単純に「鍼灸道」と云わずに「いやしの道」と名付けたのか? それには理由がある。世の一般的な鍼灸治療は、「痛い、辛い」と訴える患者さんの身体だけに注目し、その患部が楽になれば良しとし、あたかも一種の部品修理屋的な面が強い。それに対して「いやしの道」の治療が理想としているところは、心身一如の生命をそっくりそのまま根源からいやし、自他共に安心に導き、導かれることを目指す。そのために特に「いやしの道」では、患者さんといやし手とが、一本の鍼、一点の灸を媒介にして互いに如何に気が交流できるかが問題になる。

 気流法は、自と他との間で滞ることなく気が無限に流れ行く方法であり、武道、芸道等あらゆる分野で応用されている。それ故、著者はもちろん、自(医、いやし手)と他(患)という対立を越えて無限に気が交流されるには、どうすべきか? その実現に向かって工夫、努力されてきたと想像できよう。

 その論理的考察が第1部「からだに触れる からだで触れる―「生命共感」への手がかり・足がかりとして―」で展開され、その実践の苦闘の様子が第2部「スタンド・バイ・ミー―統合失調症・認知症患者の在宅療養での試み―」に赤裸々に報告されている。著者に目指したところを問うと、第1部については、

 「人が人の身体に触れるとはどういうことなのかについて鍼灸治療の枠を越えたところで考えようとしたものです。肌で感じていることは<いやし>にも<虐待>にもつながること、からだのみならずこころをも覆っているようなものが<肌>であるといったことなどについて書いています」

と答えていた。彼の原稿を拝読し、あまりにも多方面からの考察があり、引用文献の多さに驚いた。長年にわたる深い考察から得られた世界は素晴らしく、私の評価の域を越えているので、ぜひとも本文を熟読されたい。

 第二部について、彼は、

 「在宅療養での認知症や統合失調症患者との交感が一般患者とは違って難しくなるケースがあり、そういう時にどうするかということについて書きました。医師であれば薬を投与するという治療の方法がありますが、われわれは患者に触れることができなくなれば、施術ができなくなってしまいます。関わり方の工夫という点で多くのことを学んだということから、鍼灸治療をまったく行っていない認知症患者の例も挙げてあります。キングの「スタンド・バイ・ミー」の歌詞が『観音経』につながるという発想は、禅の『世語集』を読んで思いつきました」

と答えていた。

 若い時を除いて、私は往診治療をしていないので、通常誰もが為すことが無いであろう認知症や統合失調症患者に対する記録であることにまず驚いた。治療しようと試みても拒絶され、気の交流など不可能な状況でも、時には「見えざる一鍼」を工夫し、時にはベッドの傍に坐し続け、時には興味を引きそうな本を読み聞かせる等をして、何とか気の交流をさせようと努力する姿は、難透難解の公案を出された雲水が、勇を奮って室内に入っても、老師にはね返され、それでも何度もめげずに向かっていく姿に似ていて素晴らしい。さらに気の交流をすべく、さまざまな工夫をして患者にはたらきかけをして、単に理論だけではなく、具体的な患者とのやりとりの中で実践しようとする姿は、日本漢方の祖、吉益東洞がいう「親試実験」の姿であり、感銘を覚えた。読めば必ず、彼から発せられる気が慈愛に満ちたものであることが充分に感じられるであろう。

 このたびの彼のこのような内容の出版は、鍼灸界における初めての試みであり、新たな世界が開かれ、世の多くの病める人達に光明を与えられることを願い、推薦の辞と為す。
横田観風 謹んで識す

★『からだに触れる からだで触れる』に興味のある方は≫≫ Click Here!
 
この記事に対するご意見やご感想をお寄せください≫≫ Click Here!
 
第25回あはき師のための在宅ケア実践セミナー〔大阪〕
2019年10月開催
日時 2019年10月26日(土) 12時40分~16時40分
2019年10月27日(日) 9時30分~16時30分
内容 あはき師のための在宅ケア実践マニュアル 』をテキストにして“解剖学的肢位(AZP)理論に基づく在宅ケア”の実技習得を目指す
講師 西村久代(株式会社訪問リハビリ研究センター代表取締役)
会場 大阪市内
詳細 https://www.human-world.co.jp/seminer/seminer100.html
 
第1回入江FTシステム&横山式熱鍼療法セミナー
2020年1月開催
日時 2020年1月26日(日)10時~16時30分
内容 入江FTシステムの診断・処置法および横山式熱鍼療法の診断・処置法を初学者にもわかりやすいように伝授する
講師 田中寿雄(寺子屋お産塾代表) 横山卓(順鳳堂鍼灸院院長)
会場 東京都内
詳細 https://www.human-world.co.jp/seminer/seminer102.html




トップページにもどる