週刊あはきワールド 2019年12月18日号 No.646

臨床万事塞翁が馬 その19

虚実が繰り広げるワイドビューな世界!?

大阪漢方鍼医会 森本繁太郎 


◎過去記事≫≫  もっと見る

1.ええっと、虚実ですか? 虚実ですよね!

 その昔、我々の大先輩であります千葉の故八木下勝之助先生(1857~1946年)が、どこかの講演に招かれた折、「経絡治療とは、虚実をわきまえて補瀉するのみである!」とだけ言って帰られたという話がありましたが、ご存知だったでしょうか?

 この折の八木下勝之助先生の仰った「虚実」の意味なんですが、診察結果を最小限に圧縮された言葉である事が容易に推察できます。この頼りない私でも! 言い換えますればですが、「診察で虚実さえ捉えてしまえば、後は補瀉するだけで治療は十分成り立ちますよ!」と、先生は仰りたかったんでしょうね。

 一般的に言いますところの虚実の意味は、「嘘と本当」とか、「有る事と無い事」を指しているようですが、私が行っております東洋医学の世界での虚実とは、人体の抵抗力(生命力・免疫力・自然治癒力など)の強さ弱さと、病邪(外因・内因・不内外因・病理産物など)の盛衰或いは偏りを指しているみたいですね。要するに体内の正気と病邪との闘争、つまり邪正抗争とか邪正闘争プラス旺気実とかと言われる現象の事なんでしょうね。

 ごくごく簡単に言ってしまいますればですが、人体の正気の不足や抵抗力の減弱を虚と呼び、病邪が盛んなことと邪正の闘争が激しい状態を実と呼んでいるんですよね。また、患者さんの体質が強くて、有余の病証を現しているものを実と呼び、弱くて不足の病証を現しているものを虚とも呼んでいるんですよね。

 虚実というものは、一般的にはどうも相対的であり、互いに転化あるいは互いに錯綜して現れるもののようですね。

 慢性のものは病状が複雑になりやすく、正気(精気)を損傷して、実から虚に転じてしまうこともあるようですし、正気(精気)が虚すことで邪気を追い出す力が衰退してしまって、痰や食や水や血などと結びついて虚と実が交錯することもあるみたいですね。

 ところで、皆様は漢方医学における虚実の捉え方と、中国医学における虚実の捉え方には大きな違いがある事をご存知だったでしょうか?

 「えっ、そんな馬鹿げた事はないだろう、お前さん!」ですか? あるんですよね、それが、面白い事に!
 

(続きはログイン・ご購読後にお読みいただけます)

この記事の続きをお読みいただくためには、週刊『あはきワールド』(有料コンテンツ)のご購読手続きが必要です。

ご購読の申し込み ログイン(ご購読済みの方はこちら)




トップページにもどる