週刊あはきワールド 2020年3月4日号 No.656

シリーズ<いやしの振る舞い学>を工夫する 第2回

在宅療養の現場からの報告(2)

雪の降る音

いやしの道協会会長 朽名宗観 


どこかがおかしい

 治療室に来ている50歳代半ばの男性から母親についての相談があった。

 77歳の母親がベッド上で立ち上がって転び、腰を痛めたが、1カ月経っても痛みが消えないという。整形外科には転んだ直後に行き、腰椎に圧迫骨折の痕跡があるようで、はっきりと断定できる程度のものではなかったが、一応、診断はそうくだされていた。ただし、立ち居振る舞いの円滑さを見ていると、本人が言うほどには、腰痛はひどくなくなっているのではないかと思われるふしもある。

 それでも痛みを強く訴え続けるので、別の医者に行ったが、この方には気難しいところがあり、医者の応対に不満があったようで、「あんたには私の病気は治せない」とののしって帰って来たそうだ。

 腰痛以外にも本人は耳が遠くなっていると訴えるが、耳鼻科で検査すると年相応の聴力の衰えはあるが、難聴とは言えないとのこと。しかし、相手の声が聞き取れず、会話が中断することがしばしばあった。

 また、言動のちぐはぐなことと記憶力が落ちていることから、認知症が疑われたが、これも検査の結果、認知症ではないとされた。でも、何かが普通とは違っていると、医者も家族も思っており、統合失調症の可能性も懸念された。

 家は二世帯住宅で1階に母親が住み、2階にこの息子夫婦とその子どもが住んでいる。母親は昼間、ヘルパーが週2回来る時間以外は、ほとんど一人で過ごしていた。無類の猫好きで、1匹の飼い猫以外にも、近所の野良猫に餌を与えており、家のまわりには2〜3匹がいつもうろついていた。そして、電動仕掛けでしゃべる人形の世話をやくのにたいへん熱心である。

 この息子の患者から、このような母親だが、往療で腰痛の鍼灸治療をしてもらえないだろうか、もしかすると、先生を罵倒するような失礼をするかもしれないが、お願いできないだろうか、と依頼されたのである。

(続きはログイン・ご購読後にお読みいただけます)

この記事の続きをお読みいただくためには、週刊『あはきワールド』(有料コンテンツ)のご購読手続きが必要です。

ご購読の申し込み ログイン(ご購読済みの方はこちら)




トップページにもどる