週刊あはきワールド 2020年4月1日号 No.660

シリーズ<いやしの振る舞い学>を工夫する 第3回

在宅療養の現場からの報告(3)

能楽師が舞うように

いやしの道協会会長 朽名宗観 


在宅療養をする高齢者の日常生活動作を維持する

 93歳の女性、高峰さん(仮名)は骨粗鬆症があり、1年前に近所を散歩中、転倒して右脚の大腿骨を折り、その3カ月前にはベッドから落ちて左腕の前腕も骨折していた。転倒で骨折した時も激しく倒れたというのではなく、ゆっくり座り込むようにしてお尻が地面に着いたら立てなくなっており、近所の人の助けを借りて車で病院に運ばれたら大腿骨骨折だったという。1ヶ月ほど入院して、リハビリをほとんど行わずに家に戻って来たが、この1年間、家の2階にある自室と居間以外を自分の脚で歩いたことがなかった。内科的な疾患は特になく、年相応の物忘れはあっても認知症があるわけでもなく、入浴以外の日常生活動作はすべて自分でできる。しかし、充分な機能訓練を行って来なかったため、歩行がおぼつかず、ごく限られた空間での生活を送っていた。

 この方の場合は、マッサージを行って歩行訓練をすることが、私の往療の目的だった。スポーツ選手が試合や練習の前後にマッサージや鍼の施術を受けて、筋肉の緊張や血行の改善をはかって運動感覚の目覚めを促し、高いパフォーマンスが期待できる状態をつくり、怪我を防いでいることはよく知られている。高齢者の機能訓練を鍼灸マッサージを取り入れながら行うのも、基本的な目的はそうしたスポーツ選手と変わらないといって良いだろう。

 高齢者の機能訓練は障害の程度によっては集団で号令をかけながら一律に行うような方法で対応できる部分もあるが、より実際的な効果を上げるためにはひとりにつきっきりでその方の状態に応じてオーダーメイドのプランを組み立てながら訓練をすすめることになる。また、機能訓練は施術者が行うというよりも患者さんに自分で動いていただかないと成り立たないので、そのやる気を引き出すようなコミュニケーションを実らせることが鍵となって来る。見守っている施術者が気をそらすと患者のやる気もそれてしまいかねない。良いセッションができた場合は、施術者も患者も自然に高度な集中が実現していて、時間が経つのを忘れるようなこともめずらしくない。在宅医療の訪問鍼灸マッサージは個別の対応をするので、そうした施術を行うのに適した環境にあるといえるだろう。

身体技法・気流法の経験を活かす

 私は20年以上にわたって身体技法・∞気流法(坪井香譲師創唱)の稽古を続け、指導員として国内外の講習会に携わって来た。その経験が、高齢者のからだの機能訓練に立ち合うにあたって、たいへん役に立っている。
 

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