週刊あはきワールド 2020年4月8日号 No.661

臨床に役立つツボの話 第20話

異常のある列欠に指を触れただけで上がらなかった肩関節が挙上できた不思議な体験と膝関節水腫に内庭が効くことを初めて知ったときの驚きの症例

九州看護福祉大学鍼灸スポーツ学科教授 篠原昭二 


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はじめに

 経筋治療の研究を始めて23年経過したが、最初から疼痛部位と関連する滎穴や兪穴を用いる経筋治療を意識していたわけではない。40年を超える臨床を積み重ねる中で、いくつかの貴重な臨床知を通して、到達した知見である。ここでは、その一端を紹介してみたい。

冷えて肩が上がらなくなった学生

22歳の男子学生 主訴:肩の挙上困難 1993年11月初診
病歴:昨日柔道のクラブをして汗をかいた柔道着のまま体育館の外で2時間かくれんぼをして遊んでいて風邪を引いた。鼻水、鼻閉、微熱とともに肩が痛くて上がらなくなった。下宿に帰ったところ、先輩から診てやろうと言われ、色々徒手検査をしたり局所の圧痛を確認したりした結果、「上腕二頭筋長頭腱腱鞘炎」を指摘され、結節間溝部に鍼をするとよくなるはずだから仰臥位になれと言われて、その姿勢で鍼を肩関節の前面部に刺鍼された。しかし、一向に痛みが改善せず、10本ぐらい刺した結果、痛みはないが脱力感で肩が上がらなくなったとのこと。

所見:脈浮緩、自汗、微熱。咳、痰なし。表寒虚(桂枝湯)証。

本症例の病態:汗をかいた柔道着を着たまま、11月の寒い環境の中で遊んでいたために風寒の邪を感受したことによる風寒表証および手太陰経筋病による肩関節痛と考えられた。通常、現代的病態把握では、風邪の治療は放置しても、肩関節の結節間溝部に的確に鍼を刺鍼したなら、おそらく1本の刺鍼で症状は寛解したものと考えられる。しかし、結節間溝部は上腕骨大結節と小結節の間にある溝であるが、肩関節を(目一杯)外旋位で刺鍼しないと前面から当てることは難しい。普通に仰臥位を取らせると患者さんは肩関節内旋位を取ることから、この状態で結節間溝を狙って刺鍼しても当てられるものではない。したがって、治療効果が得られないためにやみくもに10本ほど刺鍼しても最終的に脱力が起こって、肩関節の挙上ができなくなったものと考えられた。また、肩関節周囲には内出血班が累々と見られ、結節間溝部への刺鍼がためらわれた。

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