週刊あはきワールド 2020年5月6日号 No.664

緊急アピール10

COVID-19、発生から現時点までの臨床情報のまとめ

~日々患者さんと対峙しているプライマリケア従事者のために~

 (1)石川家明(2)木村朗子 


◎過去記事≫≫  もっと見る
 
(1)石川家明:TOMOTOMO(友と共に学ぶ東西両医学研修の会)代表
(2)木村朗子:ともともクリニック院長

 本誌に緊急アピールを開始して、3カ月になる。週刊マガジンであるために月刊、季刊誌よりも情報の速さに対応できるので感謝している。本連載を開始執筆時2月18日は、感染症専門の神戸大学教授がダイヤモンド・プリンセス号に乗船して感染症の専門的管理ができていないと告発した日である。その後、官民あげて緊急事態ムードに変化した。

 本ウイルスはコロナウイルス科と判明しているが、その実態は人類未知の感染症である。臨床的にも未だになぞの部分が数多くあり、そのために医療現場は翻弄されてきた。しかし、この感染症の本体が徐々に明らかにされてきている。発症が知らされてから4カ月間が過ぎたが、ここにきて、世界からおびただしい数の論文が一斉にあがってきている。

 本稿では、厚労省通知や手引き、現時点(5月3日)までの医学論文(査読前を含む)と報告、国内の医療機関から提示された医療従事者向けの情報から、日々さまざま患者に接するプライマリケア従事者向けに、一般患者や感染心配をしている患者に対して説明できるための情報を整理した。

■経緯と感染法での措置

 新型コロナウイルスによる感染症は2月11日に世界保健機関(WHO)からCOVID-19と命名された。すでに、国際ウイルス分類委員会(International Committee on Taxonomy of Viruses:ICTV)が本ウイルス単体をSARS-CoV-2と名付けている。

 去年12月中旬に武漢で最初の患者が発見され年末には眼科医李文亮が医師仲間のチャットグループでアウトブレイクを警告して公安当局から、フェイクを流し社会の秩序を乱したとして処分された※1。しかし、武漢の感染は急激に広がり、1月23日に武漢は封鎖された)。

 日本では1月6日に武漢から帰国した30代男性が10日後に感染者と確定したのが最初である※2。本ウイルス感染症が「指定感染症」として施行されたのは2月1日である。法令上の名称は「新型コロナウイルス感染症」である。

 SARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こすウイルス(SARS-CoV)の姉妹種であるとして「SARS-CoV-2」と名付けられた。

 感染症の重大さなどに応じて「類型」が定められているが、ウイルス性出血熱などのような病毒性や致死率が最も高い「一類感染症」に次いで位置づけられている「二次感染症と同等」として、新型コロナウイルス感染症は措置される※3

■「患者(確定例)」と「疑似症患者」と「濃厚接触者」らの定義

 新型コロナウイルス感染症は「指定感染症」に定めた法令により医師の届け出義務がある。また、<感染症法>(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)により「患者(確定例)」、「疑似症患者」、「無症状病原体保持者」と症例定義がされている。さらに第17条に「(中略)当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者に健康診断を受けさせる(略)」とあり※4、「可能性例」(probable case)も記載されていて、「疑似症患者」(suspected case)との区別があいまいなることが起こりえる※3

 これらは、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」(用語の定義)に以下のように記載されている。ついでに、他の用語定義も示す※5

●「患者(確定例)」とは、「臨床的特徴等から新型コロナウイルス感染症が疑われ、かつ、検査により新型コロナウイルス感染症と診断された者」を指す。
●「疑似症患者」とは、「臨床的特徴等から新型コロナウイルス感染症が疑われ、新型コロナウイルス感染症の疑似症と診断された者」を指す。
●「患者(確定例)の感染可能期間」とは、発熱及び咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含めた新型コロナウイルス感染症を疑う症状(以下参照)*を呈した2 日前から隔離開始までの間、とする。*:発熱、咳、呼吸困難、全身倦怠感、咽頭痛、鼻汁・鼻閉、頭痛、関節・筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐など
●「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。
 ・ 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)
  があった者
 ・ 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
 ・ 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可
  能性が高い者
 ・ その他:手で触れることの出来る距離(目安として 1 メートル)で、必要な
  感染予防策なしで、「患者(確定 例)」と 15 分以上の接触があった者
  (周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に
  判断する)。
●「患者クラスター(集団)」とは、連続的に集団発生を起こし(感染連鎖の継続)、大規模な集団発生(メガクラスター)につながりかねないと考えられる患者集団を指す。これまで国内では、全ての感染者が 2 次感染者を生み出しているわけではなく、全患者の約10-20%が 2 次感染者の発生に寄与しているとの知見より、この集団の迅速な検出、的確な対応が感染拡大防止の上で鍵となる。

 「患者(確定例)」は、当該症状があって、PCR検査陽性であること。「疑似症患者」とは、感染が疑われて臨床的に蓋然性が高いが、PCR検査が行われていない患者である。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」の症例定義によると、「疑似症患者」の具体例として「濃厚接触者に典型的な臨床像を認め、病原体診断(筆者注;現行ではPCR検査のこと)に時間がかかる場合など」とある※6

 ちなみに、疫学調査の対象になるのは基本的には「患者(確定例)」と「濃厚接触者」である。ただし、「疑似症患者」が「患者(確定例)」になる可能性が高いものや、PCR検査陽性の「無症状病原体保持者」は個別に判断しているとなっている。

■パンデミック時に、医療者として何ができるか

 さて、このパンデミック時に「何ができるだろうか?」と心ある多くの人が口にしてくれる。ましておや医療人として一般人よりも直接的に関与できるので、考えなくてはならない課題である。

 ダイヤモンド・プリンセス号での検疫の際にDMAT(災害派遣医療チーム)が派遣されたが、パンデミックを起こす伝染病も自然災害の範疇であろう。今までの災害地での私たちのボランティア経験でも、鍼灸治療を体験した被災者の満足度は高かったが、それは亜急性期(~1カ月)から慢性期(~3年)のどの時期にかけてもであった。しかし、災害フェーズの亜急性期にDMAT関係者や救急医師に鍼灸師の役割を尋ねたら、彼らは一様にその災害地の小地域や避難所の医療的ニーズが知りたいので、発信してくれると助かると答えている。医療の援助を待つ避難所に一人でも医療のわかる人がいて、全体のニーズを的確に把握していたらもっと要援護者に適切な支援や、早期の対応が必要な援助がより多くの人に届けられるのだろう。腰痛患者に鍼灸治療も良いが、発災期まもなくであるほど、もっと多くの被災者の緊急対応に注力せねばならぬのだろう。

 同様に、医療者として、市民と協働してこの新型コロナウイルス感染症を理解して、できる対策を実施することにある。そのためには医療者として適切なCOVID-19の医学的知識を市民側に正しく伝えなくてはならないであろう。そのほか、私たちに何ができるかは、最初の<緊急アピール>に記載した。

 この感染症の収束は起きても、終息はないといわれている。おそらく、私たちはこのまま新型コロナウイルスと長い時間をかけて対峙していくことが予想されている。次の流行期のウエーブが来る間隙にこそ、鍼灸や漢方による治未病の長所が生かされ、東洋の健康思想が出番であると考えている。その時のためにも、患者にCOVID-19に関する相談や不安に的確に答えられる知識を持っていたい。

■COVID-19を理解して説明できるために

 COVID-19の時間経過と症状について、厚労省発信の指標や、各種の学会の手引き、医学論文などの情報をまとめたのが図1である※7


図1(拡大図≫≫ こちら















 感染症の診察も一般の診察と変わらず病歴聴取から始まるが、COVID-19の病歴の核をなすのは暴露歴であり、密閉、密集、密接の三密、確定感染者との接触、流行地での滞在があったかである。

 潜伏期は報告により幅が広く1~14日であり、平均値は4~5日である。感染性は発症2日前にピークがあり、有症状である発熱や咳嗽のあるときが強いようである。無症候性感染者からも感染することが判明している。

 症状を発症しても軽症は80%であり、自然に回復する。軽症といえどもわずかに肺炎の出る人もあり、微熱、長時間の咳嗽や倦怠感で苦しむ人達もいる。

重症化するのは20%以下であり、発症から7日目以上に多い。発症者全体の5%以下が重篤になる(この数字は論文によって少しく違う)。

 重症化の臨床所見は呼吸数の25~30回以上/分の増加や意識障害の出現である。危険因子は65歳以上、肥満の他に慢性持病を持っている者である。また、軽症や無症状者から容態が悪化する指標として4月28日に厚労省から緊急性の高い12症状として公表があった。
 
 ここ半月ほどで世界からたくさんの論文が発表されてきている。さらに詳しく新しい知見を整理して供覧したい。

◎参考文献
※1 https://www.bbc.com/news/world-asia-china-51409801
※2 https://www.asahi.com/articles/ASN1J350WN1JULBJ003.html
※3 守屋章成.メインページ akkie.mods.jp/2019-nCoV/メインページ
※4 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律.e-GOV
※5 新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領. 国立感染症研究所 感染症疫学センター.令和 2 年 4 月 20 日版
※6 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第1版.p8. 2020年3月17日.新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業
※7 ともともクリニックFacebook https://www.facebook.com/tomotomoclinic
 
この記事に対するご意見やご感想をお寄せください≫≫ Click Here!




トップページにもどる