週刊あはきワールド 2020年7月1日号 No.672

【新連載】『素問』 を読もう! 第1回

『黄帝内経素問』日本語訳について

欅鍼灸院 名越礼子 


 これまで『テキスト難経』『ナラティブ霊枢』と鍼灸に関する古典書の翻訳を手掛けてきた名越礼子氏がついに『素問』を翻訳し、『クラシカル素問 明解な現代語訳で東洋医学の原典を読み解く』が上肢されました。本連載は、その『クラシカル素問』から転載したものです。
 
 『黄帝内経素問』は、中医学において、現存する最も初期の医学書です。本書の成立年代は、多くの人々の考証によって、春秋戦国時代の作品とされています。しかし現在の内容と形式に至るには、漢代以降の各家による増補や改編があったことが推察されますが、その主要な内容は、2000年前の中国における豊富な医療実践の経験から導き出された医学理論であると総括されます。

 本書は、81篇に分かれており(“刺法論”と“本病論”は、遺篇として後付け))、内容は非常に豊富で、蔵象、経絡、病因、病機、診法、病証、治療原則、及び針灸などまで含まれます。全書において、陰陽、五行学説を運用し、時期により、地域により異なる症状を勘案し、辨証による治療という医療原則を堅持し、人体内外の環境の統一という整体概念を体現しています。これらのことは、中医基礎理論の根拠であり、中医による治療方法の根本原則なのです。これらは、後世の中医学術発展の重要な基礎でもあります。

 本書は、1956年に人民衛生出版社で印刷・出版された『重広補注黄帝内経素問』を底本としており、これは1852年に金山銭によって校勘されているものです。
 中医理論の水準を高めるための必読の初歩的な医学書であり、初めて学ぶ学生のみならず、中医教学に携わる研究者にとっても、閲覧・参考の用となるでしょう。また、本稿では、別項を設けて注をまとめることをせず、説明が必要と思われるところは( )を入れました。したがって( )内は訳者によるものです。

 なお、本書の原文には運気学説についての記述が含まれており(天元紀大論篇第66~徴四失論篇第78及び附:黄帝内経素問遺篇 本病論篇第73)、これらの部分は割愛させていただきました。

名越礼子(なごし・れいこ)

1939年 横浜生まれ
1962年 お茶の水女子大学理学部卒業
1968年 同大大学院人文科学研究科修士課程修了
      (中国現代史専攻)
1979年 東京医療専門学校 鍼灸専科卒業
1980年 欅鍼灸院開設(東京府中市)
2004年 東京医療専門学校教員養成科非常勤講師、
      後定年で退職
2008年 東京衛生学園専門学校臨床教育専攻科
      非常勤講師
2015年 東京医療福祉専門学校非常勤講師
著書:『中日英医学用語辞典』(共著、三冬社)
     『家庭でできる温灸療法』(自費出版)
訳書:『「症例から学ぶ」中医針灸治療』(東洋学術出版社)
     『針灸三通法』(東洋学術出版社)
     『テキスト『難経』』(ヒューマンワールド)
     『ナラティブ霊枢』(ヒューマンワールド)
 
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