週刊あはきワールド 2020年7月8日号 No.673

緊急アピール19

COVID-19の第2波が来る前に、疑似症例から鑑別を学ぶ その3

~発熱から考える~

 (1)石川家明(2)木村朗子(3)平岡遼 


◎緊急アピール18 COVID-19の第2波が来る前に、疑似症例から鑑別を学ぶ
             その2
             ~カゼか、COVID-19かの鑑別を中心に~
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(1)石川家明:TOMOTOMO(友と共に学ぶ東西両医学研修の会)代表
(2)木村朗子:ともともクリニック院長
(3)平岡遼:ともともクリニックレジデント

 前回は質問いただいた症例の解説と、新たな症例を提示しました。具体的な症例から、感染症一般の知識も含めて、広く医療の学びにつなげられるように、留意しているつもりです。刻一刻と情報がupdateされていく中で、焦らず感情的にならず冷静に議論を深めていく必要があります。この貴重なパンデミックの経験から私たちが学べることは何か、そして、私たちはどのようにして賢く立ち向かえるかを、日々考えていきたいと思います。

 今回は発熱の視点から症例をみていきましょう。「発熱=感染症?」とか、もっと短絡的に、「発熱=COVID-19の怖い患者?」として思考停止してはなりません。臨床推論で一番の障壁は、「自分自身の思考停止」です。感染症を正しく恐れながら、医療者としての職業意識を持ち、COVID-19の時代に医療知識と知恵で向き合っていきましょう。

■高体温=発熱か

 体温計で体温測定して高かった、つまり高体温は、発熱と同義ではない。発熱ではない高体温で、もっともイメージしやすいのは熱中症である。発熱に対して、こちらをうつ熱(熱放散が不十分のため体の熱がこもって体温が上がっている)という。これは高温多湿環境で起こることが多い、つまり、温度調節しようとしているのに、十分に熱放散ができなかった、という場合に起こる。


図1
 では、そもそも体温とはどう調節されているのか? 私たち人間は哺乳類、恒温動物である。よって、外気温が0℃でも40℃でも、深部体温は37℃に保たれている。細かい説明は成書に譲るが、ごく簡単に述べると、私たちのからだのなかでは体温のセットポイントが決められている。多くの場合それが37℃となっているので、外気温が低ければ体温をあげるように体が作用し、37度まで戻すような仕組みを持っている。外気が高温の時も同じように働く。そして、そのセットポイントに合わせて深部臓器(特に肝臓・心臓など)、骨格筋が熱産生を行っている。一方で熱の放散は、発汗や末梢血管を拡張して行っている。体温はその熱産生と熱放散のバランスで絶妙に調整されている。(図1)

 さて、そうすると発熱とは何か、という疑問がわいてくる。発熱は、何らかの刺激によって、身体がその体温調節のセットポイントをあげている場合に起こる。わかりやすい事例は、やはり感染症である。外界から侵入した病原体により感染すると、身体はそれに対抗しようと様々なシステムを働かせる。その働きを免疫と言う。免疫は病原体を察知し、白血球の能力を上げ、病原体を排除しようと働き始める。その白血球の動きや病原体の抑制に有利な温度を作ろうと、身体の体温のセットポイントを上げる。すると身体はそれに応え、たとえば骨格筋を震わせ、体温上昇を起こす。病原体が侵入し、寒気が生じて、震えて、そのあとに体温が上がる仕組みがこれである。一方、うつ熱の代表例が熱中症である。セットポイントはそのままで発汗による熱放散が不十分で起きてしまう。

 大まかに言うと、この「セットポイントを変化させるかどうか、が発熱とうつ熱の違いである。(図2)
 

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