週刊あはきワールド 2020年7月22・29日合併号 No.675

あはきメンタル~《からだ》と《こころ》の寄り添い編 第14回

非日常下におけるあはき師のための心理学

~緒言~

呉竹学園東京医療専門学校・あはき心理学研究会 藤田洋輔 


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 近年、過去に類のない災害が増え、そのことにより当たり前と思っていた日常を突然奪われることがあります。また、今回の新型コロナウイルス感染症の蔓延のように、今まで過ごしていた当たり前の日々が過ごせなくなり、非日常と考えられていたことを日常として余儀なくされることがあります。

 そのような状況において、人が多くのストレッサーに曝され、様々な心理状態を呈することは想像に難くないと思います。
 
 そこで、被災地における避難所生活や新型コロナウイルス感染症による新しい生活様式が求められるような“非日常が日常”となった日々において、我々あはき師が知見を広げることにより、より患者さんや人への理解に繋がると考えられる心理学的な知見について、次回からあはき心理学研究会の運営メンバーで触れて参ります。

 今後の本連載では以下の内容を予定しています。

1. 非日常下で予測される心理学・精神医学的症状

 災害時における避難所生活や今回のような新型コロナウイルス感染症の現況下において、自覚的に無自覚的に多くのストレッサーに曝されています。

 そのような状況の中では、例えば、不安障害や強迫性障害、また、抑うつ状態やうつ病などを来す可能性が考えられます。それらの症状や病態がどんなことであるか、またその背景などについて、本連載では取り上げて参ります。

2. あはき師としての専門性

 我々あはき師が意識すべきこととして、“あはき師の専門性”の観点があるかと思います。それぞれのあはき師ごとに得意な領域や拠りどころとしている施術方略は違うと言えます。それらは、個々の皆さんが研鑽してきた道のりから現在に至るもので、個々に多様なものであり、それが日本鍼灸の特徴の一つとも思います。話が少し横道にそれました。

 では、あはき師の共通した専門性とは何でしょうか。私は、“身体の専門家”、という点ではないかと思います。我々あはき師は、身体の反応に耳を傾けることが特徴の一つと言え、また、身体症状を対象とすることが多い点も身体の専門家と考えられる要素ではないかと思います。

 そして、前述の心理学的・精神医学的症状を呈した場合、同時に身体症状や身体への変化、また、姿勢や表情などの非言語的な表現が現れることが考えられます。

 それらをキャッチしフィードバックや鍼灸施術に活かすことは有用と考えます。その点についても本連載では触れていきたいと思います。

3. あはき師に有用な心理学的知見

 また、我々あはき師は身体の専門家ではありますが、心理学的知見を広げることで、臨床での気づきが増え、また、心への理解が広がることにより心の専門家との対話や連携にも繋がるのではないかとも考えられます。その知見として、例えば認知療法や認知行動療法における「出来事」「認知」「気分」「行動」「身体症状」などの枠組みを知ることによりその人についてより理解が進み、日々の臨床に活かすことにも繋がると思います。

 そのほか、支持的療法である来談者中心療法を知ることで傾聴の理解が広がりあはき臨床の奥行きが増すなど、心理学的知見は日々のあはき臨床においても学ぶところが大きいと考えています。

 心理学分野は多岐に渡ります。その中で、あはき師の専門性へプラスアルファとなる知見を、皆さんと共有して参ります。

 本連載を通じ、あはき師皆さんの知見が広がり、より良い貢献に活かしていただければ幸いです。

◎参考文献
1)高橋三郎,大野裕 監訳(2014)『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』医学書院
2)丹澤章八 監(2010)『あはき心理学入門』ヒューマンワールド
3)春木豊 編(2002)『身体心理学-姿勢・表情などからの心のパラダイム-』川島書店
4)乾吉佑,亀口憲治,東山紘久,他(2005)『心理療法ハンドブック』創元社
 
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