週刊あはきワールド 2020年9月9日号 No.681

しくじり症例から学ぶあはき臨床 その2

得気と、己の一途さとが招いた偏差!

大阪漢方鍼医会 森本繁太郎 


はじめに

 残念ながら私には幸いと申しましょうか、必然と申しましょうか、人様にお伝えするようなしくじり症例というものがほとんどないんです。だからと言って、これまでに全くしくじらなかったかと申しますれば決してそんなことはないんですが、読者の皆様の参考にしていただけたり、笑っていただけたりするようなものを、なぜだか持ち合わせていないということなんです。確かにちっちゃなちっちゃなしくじりならば数え切れないぐらいあるんですが、あまりにちっちゃすぎてお伝えするのも憚られる程度のものしかないということなんですが…。

 試しにちっちゃなちっちゃな失敗をば2つほど紹介させていただきますと、その日、どうもこの60代後半である男性の新患の虫の居所が相当悪かったんでしょうね、私の問診に対して、「あなたは余計なことは聞かずに、この私の治療だけしてくれていたらいいんだよ!」と、言い放たれてしまったことや、「以前から便秘がきついんです」と言われたので左下腹部の触診を始めようといたしましたところ、「そこは触らないで!」と、新患のご婦人から叱責されたことなどはありましたが…。基本的にはこれまで大きな効果を狙うことはせずに、小さな実績だけを積み上げるという方法をとって参りましたので、当然でっかい成功もありませんが、でっかいしくじりも何とか免れて、ここまで来られたというのが実際のところなんです。

 したがいまして、本日はしくじり症例と申しますよりは、己の体で直接体験した20年間のささやかな失敗例というようなものを開示することで、お茶を濁させていただこうかな! なんてなことを思っておりますので、読者の皆様、どうぞ最後までよろしくお願い申し上げます。

私と毫鍼との出合い

 皆様は、何歳頃に毫鍼という治療具に初めて出遭われたのでしょうか? もしかしますと、鍼灸学校に入られてからの方が、断然多いのかも知れませんね。

 ところがです、私の場合は中学1年生(13歳)の秋、確か11月の初め頃のことだったように憶えております。随分早かったでしょう! 盲学校の寮の先輩のOさんから手解きを受けたと言うべきなんでしょうが、なぜかその先輩が私に向かって「君は将来は鍼の道に進んだ方が良い! 自分が教えてあげるから練習しなさい!」と、なかば半強制的な感じで、寸3と寸6の2番の毫鍼を3本ずつ、鍼管を各1本ずつ、それに指頭消毒器とアルコール綿花とをその日手渡され、自分の足三里への刺入練習を毎日忘れずにするようにと命じられたのでありました。確かにその頃の3療師と申しますれば、大半が按摩・マッサージ・指圧師の道を歩くのが、それも自分の仕事を卑下しながら生きていくのが普通でありましたので、もしかするとこのOさん、この私にはそんな轍は踏ませたくないとでも思われたのかも知れません。見方を変えますれば、件の先輩が、私の人生のほとんどを決定してしまわれたとも言えるんじゃないでしょうかね。
 

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