週刊あはきワールド 2020年10月7日号 No.684

◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例 File.78-1

ハムストリング肉離れと鍼治療について

法政大学スポーツ健康学部/スポーツ健康学研究科 泉重樹 


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1.はじめに―肉離れとは―

 肉離れはスポーツ動作中に発症する筋損傷で、明らかな直達外力による筋打撲傷を除いたものの総称である1)。最も多い例は筋腱移行部損傷(特に腱膜損傷)であり、重症例には筋腱付着部損傷も含まれる1)。腱膜とは筋内腱とも呼ばれ、腱の延長した部分が膜状に広がっていることから命名されている。筋を包んでいる筋膜とは異なり、腱膜は筋線維が斜め(羽状角)に付着している羽状筋の特徴ともいえ、強力な収縮力を発揮するのに適した構造をしている。また高負荷の過伸展力が加わることにより腱膜自体が損傷する2)

 肉離れは、疾走中に起こるハムストリングの肉離れが最も典型的である1)。奥脇ら3)によるトップアスリートの肉離れ1078例の報告によると、もっとも症例の多かった陸上競技は312例(29%)で部位は大腿二頭筋長頭が最多で、次いで下腿三頭筋、半膜様筋であった。2番目に多かったサッカー(130例、12%)でも損傷部位は大腿二頭筋長頭が最多で、大腿四頭筋、骨盤筋(主に内・外閉鎖筋)と続いたと報告している。鳥居4)は日本陸連が行ったインターハイの地区大会、全国大会参加選手に行った調査を引用し、選手全体の約20%に肉離れの既往があったことを報告している。

 ハムストリングスの肉離れの発症メカニズムとして、スプリント型とストレッチ型に分類されている1)5)。スプリント型は、全力疾走時や加速時に強力な大腿四頭筋の働きで振り出された脚が接地動作に切り替わる際の振り戻し動作(ブレーキ動作)としてハムストリングスを収縮させた時に発症する1)5)。一方、ストレッチ型は、接地時に膝伸展位でハムストリングスが収縮している状態で、地面からの反力(介達外力)によって体幹が前屈し股関節が受動的に屈曲されることで、ハムストリングスに強力な遠心性収縮が生じることによって起こる1)5)。陸上競技短距離選手にはスプリント型のハムストリングス肉離れが圧倒的に多くストレッチ型はほとんどみられない一方、サッカーのようにダッシュや方向転換を繰り返す競技ではストレッチ型の割合が増えることが報告されている5)

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