週刊あはきワールド 2020年10月7日号 No.684

【新連載】丹塾症例カンファレンス 第1回

両大腿後面が痛む70代女性の鑑別にSick Hack

発表者 佐藤もも子×丹塾学術部 


 丹塾は2010年に創立され今年でちょうど10年目にあたります。月例会も117回を過ぎました。最近では受講生が率先して症例プレゼンテーションを行ってくれています。今回はあはきワールドに掲載の栄を頂き、読者と共に症例を紐解くことになりました。実際に発表した症例を誌上用に改変してお送りいたします。

 今回はしくじり症例第1弾として、よく鍼灸臨床で遭遇する「両大腿後側の痛み」にまつわる症例を提示します。

■私は最近しくじりました

 9月6日(日)第116回丹塾が開催され、全国各地からオンラインでご参加いただきました。今回は「ほんとうは、Critical?みんなで症例検討!」と題して、しくじってしまった! と反省した3つの症例発表が行われました。ここでは、私が発表させていただいた1例をご紹介いたします。

 私たちは、日々様々な患者さんに出会い、患者さんごとに異なる臨床経験を積んでいます。そのような中で、「両方の太ももの後ろが痛い」人が来院しました。鍼治療を続けても症状が改善しない、このまま治療を続けて大丈夫だろうかと不安になる、といった経験はあるでしょうか。今回は、よくある症状なのに鑑別できなかったという症例です。

 最初に、私がしくじってしまったということを告白します。「大腿後面の痛み」を鑑別できずに、診断が2カ月も遅れてしまいました。なぜ、もっと早く診断ができなかったのか、同じ失敗を繰り返さないためには何が必要なのか、という点をぜひここで共有したいと思います。

 平素は軽度な変形性膝関節症のため2週間に1回ほど通院中の患者さんが両大腿後側の痛みで来院されました。

■症例提示

78歳女性 150㎝ 49㎏ 4月17日初診 
主訴)両大腿後面の痛み
既往歴)高血圧症、骨粗鬆症、不眠症
社会歴)小売り商店を家族経営
現病歴)4/12からスクワットを1日20回行うようになったところ、4/14左殿部から左大腿外側の張り感が出現し、夕方にかけて徐々に疼痛となった。4/15右殿部痛が出現したためスクワット中止。台所仕事などの立位保持や立ち上がり動作で痛むため、座位の時間が長くなった。4/16左殿部の疼痛増悪。夕方の台所仕事が特に痛む。4/17の来院時は両殿部とも疼痛軽減し、右殿部の痛みはほとんどなくなった。安静時痛・夜間痛なし。下肢しびれなし。
身体所見)DTR:PTR右+/左+ ATR+/+ 叩打痛:下部胸椎- 腰椎- Kボンネットテスト左+
治療)この日は左梨状筋症候群として治療。左殿部から下肢にかけて、膀胱経の諸穴に置鍼した。
経過)
<第2診>4/20:両殿部痛消失するも、家の中での歩行や台所での立位保持で両大腿後面の張りが出現する。
<第3診>4/28:両大腿後面の痛みは軽減している。台所での前屈位や歩行時に張ったような痛みが出現する。
<第5診>5/12:痛みが良くならない。歩行時や台所で立位時に下肢後面のストレッチ痛と同様の痛みが出現する。痛みのため散歩はしていない。

 さて、このカルテ記載の中には私がしくじってしまった理由がつまっています。第三者がカルテを読んでよく分からないところは、このカルテを書いた治療者も患者を理解していない可能性が大きいことに気づきませんでした。少なくとも誤診の萌芽があることを改めて気づきました。以下、問題点と思われる所を箇条書きにします。

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