週刊あはきワールド 2020年10月14日号 No.685

治療家のためのセルフエクササイズ 第54回

筋バランスを整える重要部位23

~運動連鎖編 ターキッシュゲットアップ~

ATC&鍼灸師 山下貴士 


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 効率の良い動きを作ることを考えての運動指導では、必ず考慮に入れなければならないことがあります。それは、運動連鎖の大切さです。エクササイズリハビリテーションは、主に患部の筋力トレーニングと関節可動域の改善エクササイズを行います。しかしながら、どれだけ患部の筋力が強く、関節の可動域が増しても、実際にスポーツの動作を行うと痛みが再発することもあります。

 これは、学生時代のリハビリの授業中に聞いた有名な話です。あるアメリカンフットボールの選手が、前十字靭帯を負傷し、手術を行いました。その後、リハビリエクササイズとして脚の筋力トレーニングと膝の関節可動域トレーニングを十分に行い、左右の脚の差がほとんどないくらいに回復しました。そして、スポーツの現場復帰を果たしました。ところが、その選手は、復帰当日に、前十字靭帯を再受傷してしまったそうです。

 この話が、実話なのか授業用に作られた話なのかは分かりませんが、運動連鎖の重要性を示している良い例だと思います。再受傷の理由は、おそらくリハビリ段階で、運動連鎖を考慮したクロースキネティックチェーン(CKC)のエクササイズを怠ったためというのが結論です。CKCエクササイズとは、足を地面につけた状態での動作のことです。具体的なエクササイズとしては、スクワットやランジなどが挙げられます。また、CKCに対してオープンキネティックチェーン(OKC)エクササイズもあります。こちらは、足が空中に浮いた状態で行うエクササイズやトレーニングのことで、椅子に座っての膝の曲げ伸ばしなどが、例に挙げられます。

 CKCでのエクササイズを行うと、足趾、足首、膝、股関節などの固有化感覚受容器に適切な刺激を与えることができます。また、CKCエクササイズの多くは、多関節運動となるので運動連鎖も鍛えられます。これに対して、OKCエクササイズは運動連鎖というより、単関節での運動が主になります。そのため、弱化した筋力を集中的に鍛えたいときなどに効果的です。通常、リハビリの初期にはOKCで筋力と可動域の改善を目的とし、リハビリ後期にはCKCで運動連鎖を中心として体の総合的な機能を回復するというのが、エクササイズリハビリテーションの考え方です。 

 OKCとCOCに優劣はなく、状況に応じて使い分けていくのが良いと思いますが、効率の良い機能的な動きが目的であれば、自然とCKCエクササイズの重要度が増します。また、できるだけ全身の関節運動を多く取り入れると、個々の関節の負担が減り、適切な連動性のトレーニングとなります。この時にまず、考慮するべき大切なことは、エクササイズ時に姿勢を変化させることです。なぜなら、姿勢が変化するにつれ、重力による関節への負担の方法が変わり、関節への刺激も変化するからです。例えば、仰臥位と立位では、同じ体幹の屈曲でも明らかに筋肉へ負荷のかかり方が違います。仰臥位の体幹屈曲では、重力に逆らっての動作になり、腹筋群に短縮性の負荷がかかります。ちょうど、一般的な腹筋運動の上体起こしのような動作です。一方、立位での体幹屈曲動作は、重力に従って体幹が屈曲するので、背筋群に伸張性の負荷がかかります。どちらも同じ体幹を屈曲させる関節運動ですが、動作時に用いられる筋肉は全く異なってきます。

 姿勢を変化させながら、運動連鎖を考慮し、全身の関節運動連動性を高める効果的なエクササイズにターキッシュゲットアップがあります。

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