週刊あはきワールド 2020年12月2日号 No.692

シリーズ<いやしの振る舞い学>を工夫する 第11回(最終回)

鼠と話すのもなかなかつかれる~治療家のイニシエーションの物語~(5)

9.イニシエーションとは「愛の経験」である 10.パワースポット・江ノ島で弁才天のスピリットと交感する

いやしの道協会会長 朽名宗観 


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9.イニシエーションとは「愛の経験」である

 ここでもう一つ典型的なイニシエーションの物語を取り上げてみたい。稲垣足穂が江戸時代に本当にあったという怪異譚「稲生物怪録(いのうもののけろく)」を下敷きにして書いた小説「懐かしの七月」である。

 16歳になるサムライの少年、平太郎が一人で住む屋敷に7月のまる1ヶ月、連日連夜、化け物、妖怪の類がオンパレードで登場し、ありとあらゆる怪奇現象を引き起こす。友人たちは怖いもの見たさもあって初めのうちは助けに参じ、屋敷に泊まろうとするのだが、皆、あまりの恐ろしさに舌を巻いて逃げ去ってしまう。しかし、気丈な平太郎少年はたったひとり最後まで屋敷に留まり、妖怪変化を向かい討つのである。

 ついに最後の晩、日本妖怪界の親玉、山ン本五郎左衛門(さんもとごろうざえもん)が登場する。山ン本は平太郎少年の気丈さをほめたたえ、同時にその気丈さのため苦労することも告げながら、魔法の手槌を少年にプレゼントしてこう言った、「これからもし怪事があらば北に向って、山ン本五郎左衛門来れと申してこの槌にて柱を強く叩くべし。余は速やかに来たりておんみを助けん」。

 そして、少年に敬意を表し、お辞儀をして立ち去ろうとするが、平太郎少年も思わず会釈を返す。山ン本は駕籠に乗り、妖怪変化の大行列と共に虚空へ風が吹くように消え去った。少年はそれをぼんやりと見送りながら、一抹の寂しさを感じつつ、こうつぶやく、「槌を打つ心算はもとよりないが、僕の心の奥では次のように呼びかけたい気持ちがある。山ン本さん、気が向いたらまたおいで!」。
 

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