週刊あはきワールド 2021年1月6日号 No.696

◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例 File.80-1

身体症状症はこう治す!(1)

~コロナ禍での〝身体症状症〟に挑む中医鍼灸治療~

関西医療大学 王財源 


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★中医鍼灸のポイント
1. 身体症状症はめずらしい病気ではない !
2. 医療と連動する中国哲学 !
3. 伝統的な中国医学が提唱する心身一如の医療 ! 
4. オーダーメイド医療を基盤とした中医鍼灸 !
5. 四診を軸足とした弁証配穴 !
6. 脳の疲労と八卦陣法頭鍼法 !
7. 鍼灸が逞しい身体をつくる !

身体的な異常がみつからない ! 〝身体症状症〟

 コロナウイルスによる現在の社会情勢は、その流れを一変しているように思われる。これらは、私たち人類が挑戦する時であり、心理面にも強く影響を与え、〝見える化〟してきた私たちの生活に〝見えない〟形で入り込んでいる。鍼灸の治療も例外ではない。心理的な素因により身体の不調を訴える人々が、社会の片隅で苦しんでいる現状にある。

 このような中、ある1つの病気に注目する。〝身体症状症〟である。この疾患はあまり聴き慣れない病気であるが、私たちの身近に、少なからずとも、日々、忍び寄っているように思う。かつては身体表現性障害に分類されていた病気だ。

 今、この疾患で悩んでいる現代人は少なくはない。身体的には、MRIによる画像検査、血液検査などを行っても、症状に見合った明確な所見がみつからない。ところが、身体的な異常を具体的な形で感じるという複雑な疾患である。病気の〝見える化〟が現代医学の基本ではあるが〝身体症状症〟の症状は多彩であり、めまい、ふらつき、不眠、息切れ、腰痛、肩の痛み、消化器系では腹痛や嘔吐感など、それぞれの症状が人によって異なっているという特徴がある。症状は慢性化するにつれて、多くの医療機関を受診するものの、訴えに見合うような、器質的な所見がない。そのために、自律神経失調症などと診断されるケースがある。

 とりわけ、腰痛などの疼痛性疾患で改善困難なものには、鎮痛剤を長期服用するものの、症状の改善ができずに悶々とした日々をすごしている患者もいる。また、高齢になる患者さんは、加齢による老化現象として諦めてしまい、そのためにQOLが低下して、日々の生活で悩んでいることも、そうめずらしくはない。

原因が不明、人によって症状が異なっている

 コロナ禍での日常生活、腰痛や肩痛で医療機関を受診し、ロキソプロフェンなどの鎮痛剤を処方され、服用し続ける人、苦痛な症状が変わらないという人、安定剤を服用するものの不眠症が長期に及び改善しない、そのために服用薬の種類が増えて悩んでいる人。また、めまい、ふらつきが激しく、日常、横になることが増え、生活が不規則となり苦しんでいる人。ハッキリとした原因は不明であるが、身体的な異常を感じる人。このような症状が続くと、症状がとれないために大きな不安感を抱えるようになる。イライラすることも増えて、気鬱などの症状により、生活の質を低下させる。そのため、最終、心療内科を受診するケースも決して否定はできない。

器質的には〝問題がない〟疾患である。しかし…

 〝身体症状症〟は、器質的な異常がないために、往々にして〝問題がない〟という結論にたどりつく。しかし、検査結果では〝問題がない〟としても、慢性化する症状がストレスとなって悪化していく傾向が高いことから、〝問題がない〟ということが、むしろ危険なのである。病の〝見える化〟を実施することが現代医学の基本なのである。

 2013年、「精神障害診断・統計マニュアル」(DSM)も第5版となり改訂された1)。アメリカ精神医学会により出版され、精神疾患の基礎がここに載る。この書の改訂により、以前では〝身体表現性障害〟に分類されていた疾患が「身体症状症および関連症候群」と呼ばれ、日本では心身症などに分類される。

 また、〝身体症状症〟の生涯有病率は4~5%と言われ、発症しても明確な原因は分からないという。精神的ストレスや過去に負った外傷などが原因で、痛みの信号が脳に入り続け、脳の活動に異常を引き起こす。そこに治らない不安感や、不安による入眠障害が不眠を引き起こし、わずかな痛みが、数倍にも強い痛みとなって感じ取るのである2)

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