週刊あはきワールド 2021年1月13日号 No.697

◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例 File.80-2

身体症状症はこう治す!(2)

~実証型とは異なった心脾気血両虚証の症例~

関西医療大学 王財源 


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 伝統的な中国医学では目で見えるものを〝形〟と呼び、目には映らない機能的な活動を〝神〟とした。このことは前号で詳しく述べた。たとえば〝いのち〟は目には映らない、だが、身体活動から生命への強い営みをみる1)

 人の身体は不思議なものである。

 〝こころ〟と〝からだ〟は1つの身体という器に収められ、無限なるエネルギーを放出するという古代の中国思想がある。そこには心理的負担の度合いと受け止め方によって大きく変わる。

 つまり、器に受け止めて消化できる時間は、人の感じ方、個々に与えられた質や量の違いによって異なる。

 〝こころ〟が傷むと言うと、すぐに〝ストレス〟かよ! と結びつける人もいるが、私たち人類は、そんなに弱いものではない。

 何気なく想う他者への思いやり、家族に注ぐ限りない愛情、友人への優しさ、すべてが私たちの気持ち、即ち、〝気〟から出発している行為である。

 自ら望んで実践する行為は〝ストレス〟とならないが、しばしば嫌なことになると、人はこれを〝ストレス〟と思うことも決して少なくはない。

 私たちの〝こころ〟には、怒りや悲しみ、悩みや憂いなどの感情を、脳は瞬時に受け止めて身体的活動とつなげる。

 コロナ禍の生活で、気持ちが落ち着かない、イライラすることが多くて体がだるい。夜、眠れない、鎮痛剤を長期服用しても腰の痛みが消えない等々。このような不定愁訴をもつ人々は増加しつつある。

 とりわけ、ストレス関連疾患は、現在、過敏性腸症候群を代表格とする機能性消化管障害により発症する人は少なくはない。過敏性腸症候群は〝脳〟からの遠心性信号による〝小腸〟と〝大腸〟の機能異常の病態で、心身症の1つとして取りあげられている2)

 伝統医学には、大腸は肺に、小腸は心へとつながっていると考えられていることから、大腸の働きが衰えると呼吸器系に症状が現れ、小腸の活動低下により循環器系に病態があらわれる。このことは、古代中国医書『黄帝内経』に記されている。

 また、『黄帝内経』にはストレスの長期化が気滞、気鬱などの病的体質を引き起こすことを述べられている3)

 〝気〟の停滞は気血のスムーズな流れを鬱ぎ、そのために身体がすぐれない状態となる。

 〝気〟が塞がると無気力(鬱)となる。これは現代医学のうつ病とは異なっている。

 金元王朝期、四大医術家の一人である朱丹渓(1281-1358)の〝鬱〟への造詣は深く、彼の実力は後世の医家によりまとめられた。その医書に『丹渓心法』がある。そこに〝鬱〟についての記述があり、身体の〝気〟の流れを促進させ、閉塞を解き放つことを述べている。

 たとえば現在の中医学における臓腑学理論も、肝が持つ「疏泄」という働きが低下すると精神的なバランスが崩れ情緒の乱れを生じさせる。肝には血を貯蔵する機能がある。衰えた〝気〟による「疏泄」という肝の作用は、血の流れに障害を生み〝瘀血〟を生じる。そこに生じた不純物は体内に溜まる。そのことで運動機能を鈍らせる。したがって、五臓の働きによる新陳代謝の活性化は、〝気〟と〝血〟の循環を改善させることにある。

 そこで一例ではあるが〝気〟の巡りに関与する〝こころ〟と五臓の関係性について提示したい(表1)。
 

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