週刊あはきワールド 2021年2月10日号 No.701

しくじり症例から学ぶあはき臨床 その7

高齢者の腰痛症の失敗症例に学ぶ

蓬治療所 戸ヶ﨑正男 


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1.はじめに

 もう20年以上も前のことである。ある高齢者の治療を失敗したことがきっかけとなり、高齢者(特に後期高齢者)の診察上、診断上、治療上に多くの教訓と示唆を得た。この成果を2017年第47回日本伝統鍼灸学会金沢大会で研究発表した。「高齢者の運動器系疾患における診察部位と治療に関して」というテーマである。

 患者さんがだいぶ多くなり、臨床経験も積んで治療に自信がついてきていた時期であっただけに大変ショックであった。しかし、過去において治り難い患者さんも多く、また、決定的な失敗ではないが治療後数日痛みが強く出てしまった例もままあったので、失敗した患者さんには悪いことをしたが、高齢者の治療を大幅に見直す良い機会になったとも言える。

2.症例(診察・診断・治療)

(1) 診察所見
 199x年11月、78歳、身長173㎝、体重76㎏の男性が腰痛症で来所。

 初診時、医療面接で次のような所見を得る。

(主訴と愁訴)
 10日前から腰痛と足先のしびれが発症。また、右手がしびれという。

(現病歴)
 腰痛は仰臥位から起き上がるときに特につらく、立位でも歩行時でも痛みがつらい、また、真っ直ぐ立っていられない、毎朝体操をしているが、今回はやりすぎたようだと言う。1、2年前から時々腰痛が出ているが、今回のように強いのは初めて。大腿後側部にも痛みが出る。

 手のしびれは起床時、1~2時間続き冷感がある。体操をすると楽になるようだ。

(既往歴)
 5、6年前に腰痛発症、骨の老化と診断。注射をしていた。

 高血圧症で薬服用中、また、糖尿病で食事療法を行っている。

(職業と全体状態)
 職業は会社役員、坐業が長い。

 身長173㎝、体重76㎏、精神状態は安定、体格は大きく、色白、顔はやや長く角張って、顔の色艶あり。若い頃は筋肉質で骨太であっただろうが、今は脂肪化している。

 睡眠状態は良好。飲食に関しては食欲普通、偏食傾向なし。便通は特に問題なく、夜間尿2回あり、冬場は手足が冷える。

 初診時、身体診察で以下の所見を得る(図1)。なお、ツボの状態はツボの四型分類による(図2)。
 

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