週刊あはきワールド 2021年3月3日号 No.704

◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例 File.82-1

血管性の間欠跛行に対する鍼灸治療法とその症例(1)

~血管性の間欠跛行に対する鍼灸治療法~

東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 安野富美子 


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Ⅰ.はじめに

 鍼灸の患者さんは肩こり、腰痛が圧倒的に多いが、65歳以上の高齢者では、下肢症状を訴えて来院される方も多い。中でも間欠跛行を呈する場合、整形外科疾患である“脊柱管狭窄症”はよく知られているが、血管性の間欠跛行を呈する閉塞性動脈硬化症(Artheriosclerosis Obliterance:以下ASOと略す)は、意外と知られていない。

 さらに、患者さんは“間欠跛行”という言葉を知らずに来院されるので、“足の痛み”の原因(病態)を把握し、鍼灸治療にあたることが重要である。その例として、私が治療にあたった症例を、初めに紹介したいと思う。

 以前勤務していたZ病院でのことであるが、整形外科から「下腿の筋肉痛」で紹介されてきた患者さんがいた。「ダンス(社交)をした後から足が痛くなりました。ダンスシューズが合わなかったからだと思います」とのことであった。患者は68歳の女性で、問診後に下肢動脈を触れてみたところ、片側の膝窩動脈以下が触れなかった。そこで、「歩いていると足が痛くなって途中で休みますか、また、休むとまた歩けるようになりますか?」と尋ねると「そうです」とのこと。「何mぐらいで立ち止まりますか?」「80mぐらいです」ということでASOを疑い、鍼治療を開始するとともに脈管外科へ紹介した。

 同様に以前勤務していたT大学病院でのこと。脊柱管狭窄症(MRIで確定診断)による間欠跛行ということで、紹介された患者さんである。 75歳の男性で、問診したところ、「歩いているとふくらはぎが絞めつけられるように痛む」「休む時は腰を前屈みにしても楽にならない」とのことであった。理学所見をとっていくと、患側下肢動脈が触れにくく、皮膚温低下がみられた。ABPIも低下していた等の所見からASOを疑い、鍼治療を行うとともに、脈管外科に紹介した。

 また、4年以上にわたり、鍼治療を受けていた68歳の男性が数日前から足が痛くなって、歩けないと訴えて来院された。歩き始めから痛く、30mぐらいしか歩けないという。寝ていても足から親趾にかけて痛むということであった。患肢にチアノーゼがみられ、膝窩動脈以下が全く触れなかった。緊急で脈管外科に受診依頼した。この患者は、急性の大腿動脈の閉塞であった。

 今までに遭遇した患者さんASO3例を紹介したが、閉塞性動脈硬化症の病態と症状を理解し、医療面接、身体診察を詳細に行えば、鍼灸師でも本疾患を鑑別することは比較的容易である。

 本シリーズでは、はじめに閉塞性動脈硬化症患者を治療する際に必要な知識と私が行っている鍼治療の方法、および代表的で心に残る症例について紹介する。

Ⅱ.血管性の間欠跛行-閉塞性動脈硬化症-とは

1.閉塞性動脈硬化症とは
 閉塞性動脈硬化症(Artheriosclerosis Obliterance:ASO、以下ASO)は、 四肢末梢の主幹動脈が動脈硬化により狭窄・閉塞を起こし、循環障害の症状をきたした疾患である。60歳以上の男性に多く、背景因子として、高血圧、糖尿病、高脂血症、維持透析、喫煙などがある。超高齢社会の到来と生活習慣の欧米化による食生活の問題や運動不足、ストレスの増加などから今後ますますの増加が予想されている。
 

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