週刊あはきワールド 2021年5月26日号 No.715

あはきメンタル~臨床心理学入門編~ 第8回

一人でできるカウンセリングのトレーニング(4)

~想定書簡法~

目白大学大学院心理学研究科教授 奈良雅之 


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 「自分で自分を褒めたいと思います」。これはアトランタ五輪で銅メダルを獲得した直後のインタビューにおける有森裕子さんの言葉です。この言葉は歌手の髙石ともやさんの「自分をほめてやろう」という楽曲の歌詞の一節です。高校2年生の有森さんが全国都道府県対抗女子駅伝大会に補欠として参加したとき、開会式で髙石さんが歌うこの歌を聴き、会場で大泣きしてしまったそうです。そして、すぐに書き留めた歌詞の一節が、後のアトランタ五輪のあの場面で無意識に出たということを有森さんは回想しています。

 思ったことを書き留める。理不尽な出来事やできなかった後悔、つらい状況などは、書くことでほんの少し気持ちが楽になり、前向きになれるかもしれません。また、歓喜の出来事や成功体験、順調な状況も書くことで冷静な気持ちを取り戻すことができるでしょう。

 福島脩美先生は、手紙という形式によって、書いて読む書記的方式による自己カウンセリングとしての想定書簡法を提案しています。

 福島・高橋(2003)によれば、想定書簡法の実施後において、肯定的感情は促進され、否定的感情は低減されることが報告されています。

 ここでは、福島先生の想定書簡法について紹介し、その活用について考えてみたいと思います。

1.投函しない手紙を書く

 想定書簡法は、まず、自分がクライエントとなり、優しく理解し暖かく支えてくれる身近な人を想定上のカウンセラーとして、手紙を書くことから始まります。筆記用具を準備して、電話や雑音に邪魔されない静かな場所を確保して座ります。そして目をつむります。以下は福島先生の教示文です。
 

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