週刊あはきワールド 2021年9月1日号 No.728

◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例 File.87-1

膝痛に対する私の鍼灸治療法とその症例 (1)

~メンタル・タフネスの鍛え方と治療同盟のつくりかた~

神戸東洋医学研究会 早川敏弘 


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過去の「治せなかった自分」への贈り物

 こんにちは! 神戸東洋医学研究会の早川敏弘と申します。よろしくお願いいたします。愛読する「あはきワールド」の人気シリーズに執筆するチャンスをいただき、光栄です。

 依頼をお受けした際に、考えたのは「どんな人のために書けば、役立つことができるだろう?」ということでした。自分のココロに浮かんできた答えは、学生時代の自分や卒後数年の「まだ、治せなかった頃の自分」が一番、知りたかったこと、役に立つことを書こうと思いました。わたしは昔、膝痛の治療が本当に苦手でした。膝痛の治療が苦手な鍼灸師さんって、実は多い印象があります。昔のわたしの仲間です。

 もう一つ、思い浮かんだのは、「あはきワールド」で連載されている天野弘子先生とのやり取りです。天野弘子先生は「あはきワールド」の連載の中で鍼灸師としてのメンタルを強くする方法について書かれていて、わたしが「鍼灸師としてのメンタル強化」について、もっと読みたい! と感想をお伝えしたことがあります。この機会に、20年前の自分と同じような方のために、膝痛の治し方とともに、このテーマも同時にお伝えしたいです。というのは、わたしの膝痛の治し方は、まさに、この部分と関係しているからです。

メンタル・ゲームとしての鍼灸臨床とメンタル・タフネスの鍛え方

 わたしは中学・高校の頃はテニス、小学校の頃は将棋やチェスをやっていました。テニスの歴代チャンピオンたちが異口同音に「テニスはチェスに似ている」と言っています。わたしも同感です。どちらも、相手との対話であると同時に、「マインド・ゲーム」「メンタル・ゲーム」の要素がものすごく大きいのです。『メンタル・タフネス』という本を書いたスポーツ心理学の第一人者であるジム・レイヤーさんはテニスプレイヤーであり、テニスコーチでした。チェスとテニスは、上級者になるとメンタル・タフネスの要素が技術の要素よりも高くなります。よく言われるのは、テニスの世界ランク1位から150位くらいは、技術的に横一線であり、技術的には紙一重の差に等しいです。テニスの世界で、よく言われるのは、『テニスの技術が上手』なのと、『テニスが強い』のは全く別ということです。トップのテニス選手の強さはイコール精神力の強さであり、彼らはたくさんメンタル・タフネスの本を書いていて、わたしは40年くらい読み続けています。余談ですが、最近の傑作は『マリア・シャラポア自伝』で、シャラポアの精神力が強すぎて、読んでもまったくメンタル・タフネスの参考にならなかったのです(笑)。

 わたしが、この文章で伝えたいのは、マリア・シャラポアのような、生まれながらの天才ではなくて、20年前の「精神力が弱かった自分が知りたかったこと」です。

 臨床経験を積んでいって、気づいたことは、鍼灸臨床はテニスやチェスに似ている! ということです。言い方は悪いですが、マインド・ゲーム、メンタル・ゲームなのです。20年前の自分に伝えたいのは、メンタル・ゲームであるチェスやテニスのように、鍼灸臨床をとらえると面白いよ、ということです。

「エンカウンター:患者さんと出会う」

 慢性膝痛の患者さんの代表は「変形性膝関節症(OA)」です。「変形性膝関節症(OA)」を苦手とする若い鍼灸師さんは多いですよね。わたしも苦手でした。最近の研究では、慢性膝痛をもっている患者さんは「破局的思考」という思考のクセをもっているということです。典型的なのは、お医者さんなどで「この膝痛は治らない」「そのうち歩けなくなる」と言われてしまったために「歩けなくなったら、どうしよう」と不安と恐怖にかられた患者さんは、悪循環に陥り、痛みにとらわれた状態になります。「呪い」にかかった状態なんです。「慢性膝痛は治らない」と心の底から信じている患者さんとは、出会いの瞬間がものすごく大事です。
 

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