週刊あはきワールド 2021年10月6日号 No.732

◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例 File.88-1

アスリートのコンディショニング

~スポーツ傷害の治療だけではない鍼灸の強み~

明治国際医療大学鍼灸学部 吉田行宏 


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1.はじめに

 コロナウイルスの世界的なパンデミックにより、1年延期された2020東京オリンピック・パラリンピックが大きな混乱もなく閉幕したことは記憶に新しいところである。一部世論の反対がある中で、また感染対策による無観客での開催ではあったが、トップアスリートが見せるパフォーマンスは素晴らしく、勝者の喜びと敗者の悔しさに共感しながら観戦した方も多かったのではなかろうか。自国開催は大きなアドバンテージであると同時に、裏を返せば相当なプレッシャーがかかる状況にもかかわらず、獲得メダル数は過去最高であった。

 アスリート自身の常人では想像もできないような努力と覚悟によってもたらされた結果であると同時に、その裏でアスリートを懸命に支えている関係者がいることも忘れてはならない。コンディショニングの観点からすると、本来2020年に開催される予定であったため、ピーキングは2020年に設定されていたはずである。その前にオリンピックに出場するためには予選を勝ち抜かねばならないため、まずはそこにピークを持っていくようなピーキングが行われていたと考えられる。短い期間でピークを2回作ることがどれだけ大変なことかは、スポーツに関わったことがある方であればご理解いただけると思う。

 また、オリンピック出場が目標の選手と、オリンピックで金メダルを取ることが目標の選手ではその過程が異なるばかりか、予選突破という結果を出した後のモチベーションも大きく異なると考えられる。オリンピック出場によりいわゆる燃え尽き状態になることもあると考えられる。

 そんな中で開会式の4カ月前の2020年3月末に開催延期が決定した。アスリートの失望、落胆、絶望はいかばかりであったかは想像もできない。中止が決定してから2021年7月末に実際に開幕するまで1年4カ月もの間、中止か開催か全く先が読めない状況で、感染対策により満足な練習もできず、プレッシャーとも戦いながらモチベーションとコンディションを維持することは大変な困難であっただろう。アスリート自身やそれを支えるスタッフが、身体的なコンディショニングはもちろんのこと、精神的なコンディショニングにどのように取り組んでいたのかは、今後のスポーツに大きな示唆を与えるものであると考えられる。

 このような背景に思いを巡らせながら観戦した今回のオリンピック・パラリンピックは、自国開催であることも相まって、改めてスポーツの素晴らしさを実感した大会であった。少し話題が逸れてしまったが、今回はアスリートのコンディショニングと鍼灸について話を進めていきたい。

2.コンディションとコンディショニング

 「コンディション」とは明確な定義はないが「ある一時期において、アスリートのパフォーマンスに影響を与えるすべての要因」とされている1)。コンディションは大きく分けて「身体的因子」、「精神的因子」、「環境的因子」、「情報的因子」の4つの因子に分けることができる(表1)。
 

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