週刊あはきワールド 2021年10月13日号 No.733

【新連載】独身高齢患者の新型コロナ感染顛末記 その1

新型コロナ感染から回復した、慢性腎不全の高齢患者の背景に垣間見えるもの(1)

~「レイニー ブルー」が心にしみる~

いやしの道協会会長 朽名宗観 


人好きな独身高齢者の孤独

 栗山月子(仮称)さんは米寿を迎えた、一人暮らしの女性である。都心のアパートに住み、結婚歴は3回あるがいずれも離婚しており、子どももなく長く独居生活を続けている。親戚も地方にいる高齢となったいとこが一人いるくらいで、そのいとことも時々電話で連絡をすることがある程度でもう長く会ったことはない。仕事の現役時代は、外資系会社の受付、化粧品のセールスなどの会社勤めだけではなく、数年間は雀荘を経営していた経歴も持っている。社交的な性格であるため、仕事をしていた頃から付き合っていた友人が多くいたが、90歳近くともなると、ほとんどが亡くなってしまった。唯一、会社に勤めていた頃の後輩で栗山さんがよく面倒を見ていた女性がいて、栗山さんに恩を感じており、深い付き合いが続いているくらいだった。 

 しかし、孤独な晩年となったことは間違いがなく、寂しさを毎日の生活で感じており、一人での夕食に耐えられなくなると常連となっている店にタクシーで出かけることも珍しくなかった。かつて住んでいた、私が往療を始めた頃の大きなアパートの1階はテナントとなっており、そこに入っている店の店員と知り合いになると、そういう人を誘って寿司屋、居酒屋などに出かけるのである。人恋しさが人一倍強いと言えるだろう。

 私が、栗山さんを往療するようになったのは2年ほど前からで、病名としては、気管支喘息、狭心症、腰痛症があり、そして慢性腎不全のため人工透析を受けていた。往療の主な目的は、鍼灸治療によって腰痛症、および、気管支喘息、狭心症などにも原因があると思われる頑固な左項背部痛を緩和しながら、廃用性筋萎縮を進行させないためのベッド上での自動運動法を行うことだった。外出する際は専ら歩行器を用い、長い距離の歩行は筋疲労が生じて難しい状態にあったが、近いところであれば出歩くことをさほど厭わなかったのは下肢機能の低下予防に役立っていた。


写真1 栗山さんの鍼灸治療をする筆者


















 ピエロが好きだとのことで、部屋にはピエロの置物がいくつも置かれている。買い物好きで欲しいものがあるとつい買いたくなって、衣装、靴などが着用されることのないままに増えていくのが常である。新型コロナ感染症が流行ってからは、おしゃれなマスクが使われることのないまま数だけが増えていった。人工透析を受けている病院には毎回、違ったパジャマを持参し、病院の看護師から「お若いですね」と言われて機嫌を良くしている。

 パソコンを持っており、不自由ながらもインターネットを何とか使いこなそうとしていて、訪問して来る男性ヘルパーから使い方を教えてもらっていたが、そのヘルパーからも、「私が伺っているお年寄りで、パソコンを使おうとする方はいないですよ。栗山さんはお若いですね」と言われたとのことで、本人自身もまだ70歳代くらいのつもりでいるようだった。確かにまだ色気を維持しようとする気持ちがあり、美容院通いやピアースなどのおしゃれにも余念がないので、本来の年よりは若く見えるかもしれない。しかし、私はちょっと意地悪くそこに水をさすように、食事の皿を載せたお盆を持ちながら台所と居間の境目にある1センチほどの段差に躓いて転倒し、食べ物を畳にひっくり返したことや高い棚の上のものを取ろうとして脚立から落ちたことを指摘して、気持ちにからだがついていけなくなっていることを自覚した方が良いことをときどき話していた。

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