週刊あはきワールド 2021年11月10日号 No.737

独身高齢患者の新型コロナ感染顛末記 その2

新型コロナ感染から回復した、慢性腎不全の高齢患者の背景に垣間見えるもの(2)

~新型コロナ感染で肺炎、「奇跡的」な回復をしたものの…~

いやしの道協会会長 朽名宗観 


コロナ禍でもやめられない飲食店通い

 スマートフォンの画面をスクロールする人たちの姿を見ただけで、スマートフォンにどんな機能があるのかもわからないにも関わらず、どうしても欲しくなってしまった。ガラケーの携帯電話は持っているが、パソコンの簡単な機能が使いこなせない様子を知っているので、私は手に余るのは間違いないだろうから購入するのはやめた方が良いと何度も話していた。しかし、スマホが欲しいという衝動をどうしても抑えられず、携帯ショップが近くにあるのでその教室で教えてもらえば何とかなるだろうということで、購入することになったのである。

 案の定、何度、スマホの教室に通っても、それだけではなく訪問するヘルパーや私が手ほどきしても、電話をかけることや受信することさえも思うようにできなかった。とうとうスマホの着信音が鳴るだけでもストレスとなり、ガラケーに戻らざるを得なくなった。スマホは購入時のショップの真新しい紙袋にしまわれたまま、お蔵入りとなったのである。ある衝動が起こるとそれを留めることが難しいという栗山さんの性格が、このエピソードからも窺い知ることができるだろう。

 昨年、新型コロナの感染が拡大してからは、友人と会うことや外出がこれまでよりも制限され、アパートに閉じこもっている時間がさらに多くなり、退屈を感じるのが今まで以上となっていた。夕食の時間になると一人でいることの寂しさにたえられなくなって、連れがいるわけではないが、店員とのささやかな交流と人声のするところを求めて居酒屋などの飲食店に通う回数が増えて行った。歩行器を使って行ける近場の店が主ではあったが、時にはタクシーを使って足を延ばすこともあった。感染が広まっているのは飲食店であることは周知のことであり、私は外食は控えた方が良いことを重ねて告げていた。栗山さんの場合、慢性腎不全だけではなく複数の基礎疾患を抱えた高齢者であり、新型コロナに感染すればそのまま命とりになると考えたからである。

 年末の最後の往療の予定日、栗山さん宅を訪れたが、呼び鈴を押しても応答がなく、留守だった。固定電話や携帯電話に連絡しても、つながらなかった。予定をすっぽかされたことになったが、その夜、電話が通じて、外食に出かけていたことがわかったのである。本人はその日は年末なので往療の予定はないと思っていたと言う。認知症の傾向が出はじめていたのでその言葉に嘘はないと思われるが、正直なところ「困った人だな」と感じたのも事実であった。

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