週刊あはきワールド 2015年2月4日号 No.412

『阿是指圧』へのいざない

浪越指圧をベースにした独自スタイル「阿是指圧」の基本(伏臥位、仰臥位、座位の型)が学べる

『阿是指圧』の「はじめに」より

 小野田茂 


 このほど、『阿是指圧 伏臥位・仰臥位・座位の基本施術』を上梓いたしました。ここでは、本の紹介を兼ねて、本書の「はじめに」を転載させていただきます。(編集部)

はじめに

阿是指圧 伏臥位・仰臥位・座位の基本施術(監修: 石塚 寛、著:小野田 茂) スペインに来て痛感したのは、日本で身につけた技術がすんなり通用しないということでした。日本をいきなり飛び出して、環境がガラリと変わるのは覚悟していたものの、生活の基盤である食べ物や習慣が違う。宗教、価値感も違う。患者さんの態度も異なる。当然、体つきも違います。背骨のカーブが大きい。体の重心が高い。かかりやすい病気も違う……。そして、職業上、特に感じたことは、刺激を受けた時の体の我慢度(許容量)が東洋人には信じがたいくらい極端に低いということでした。

 日本と同じ施術をしても一向に満足してもらえず、日本の治療の常識が当てはまらないことに、正直慌てました。それどころか、圧や鍼(はり)の刺激に慣れていない西洋人に日本式施術をしようものなら、次の日はメンケンで起き上がれないといった患者さんに電話でガンガン苦情を言われたことも何度も経験しました。どれくらいの刺激が適量なのか、最初は調整がうまくいかず、何年も患者さんの獲得に苦労しました。そして、異なる体型に適した施術方法を身につけるまで、ひたすら技術を変化させ、それを体に染み込ませ、覚え込ませました。

 指圧の普及にしても、日本では、「見よう見まねで手を動かす。説明は手が動くようになってから」という実践方式で、生徒は何となく納得し、実習に汗を流します。しかし、ヨーロッパの人間は理論が頭に入らない限り、手が動きません。というより、動かそうとしません。「一に実習、二に実習」の意気込みはあっけなく粉砕し、ましてや精神論などもってのほかです。純粋に日本スタイルで推し進めるのか、こちらのやり方を取り入れて、まず生徒を納得させるのが先か? は、今でも正直、結論が出ていません。

 ただ、治療に関しては、「こちらの人の体に合わせた治療がベスト」なのは確かで、この確信は絶対に揺らぎませんし、今までそれを実践してきました。

 痛みを取る基本テクニックや治療過程(順番)は日本人と西洋人の治療方法に違いはあっても、最終目的である患者さんを満足させることにおいては、すべての国、すべての人種を問わず共通したものであるということは言うまでもありません。そこに指圧の奥行きの広さを改めて感じつつ、治療の幅を広げております。

 私はスペインで指圧治療を始めた30年前から背骨、すなわち腰痛、頚部痛といった俗にいうフィジカルペインの患者さんを主に治療してきました。ところが1990年代後半から当治療院の患者さんにメンタルペインを訴えて来院する患者さんが目立ち始めました。

 今の時代、環境の変化があまりにも目まぐるしく、目に見えない精神的ストレスが想像以上に私たちに降りかかってきます。追いつかないのは変化変遷のスピードだけではありません。東洋風の「黙って受け入れる」精神と、欧米的な合理精神をどう折り合わせるかなど、文化や価値感も多種多様で、何を基準にしてよいのか、迷ってしまいます。そんな坩堝(るつぼ)の中で翻弄されたら、「カルチャーショック」が生じてもおかしくありません。現代の慌しく複雑な社会が体や心に引き起こす摩擦や違和感が徐々に現代人の体を蝕み、半健康症候群やスマートフォン症候群などといった現代病を次々と世に送り出しています。諸々のアレルギー症などはまさにその典型かもしれません。

 特に大都市では、洋の東西を問わず、精神面の治療を必要としている人が急増しています。精神的ストレスが、体に反射して、体の節々が痛むなど肉体的ストレスを引き起こします。痛みは取りたいけれど薬の投与は避けたい、という理由で、手技療法に希望を託すケースも多くみられるようになりました。肉体と精神のアンバランスが痛みとして現代社会に生きる人間の体を侵食し始めたのです。精神の悩みを抱えると、すぐ心理療法士や精神科医に相談する欧米社会でも、「手当て(指圧)療法」が脚光を浴びてきました。指圧の価値が光り始めたヨーロッパの実態がここにあります。

 多くの自殺者を出す日本社会、西洋医学に行き詰まりを見せるヨーロッパ、そこに救世主のごとく現れた原始療法である手当て(指圧)が、すでに西洋医学だけでは解決できない摩訶不思議な私たちの体にどこまで貢献できるのか、期待が高まっています。

 こんな意味も含めて阿是指圧の基本である伏臥位、仰臥位、座位の型をまとめてみました。特に精神面、肉体面の虚実のアンバランスにおける基礎的治療を考えつつ、多方面からの治療のアプローチを考慮してテキストを作成しました。阿是指圧の型を覚えることはもちろんのこと、考える指圧をテーマに、一つの課題が多方面につながっていくといった頭の柔軟性をもった指圧師を育成するためにも役立つはずです。

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小野田茂(おのだ しげる)

日本指圧専門学校25期卒業。1984年指圧普及のため、スペイン、マドリードに渡西、指圧治療院開設。1990年スペイン指圧協会を立ち上げ、会長に就任。1994年、スペインにて日西指圧学院(マドリード)開設。2000年、日西指圧学院(マラガ)開設。2002年、ヨーロッパ指圧浪越を立ち上げ、代表に就任。2011年、日西指圧学院(バルセロナ)開設。2012年、第16回国際指圧大会をマドリードにて開催。日本、スペイン、ポルトガル、オランダ、南米向けに計16冊の指圧テキストを執筆出版。浪越指圧を世界に普及する傍ら、独自のスタイル、阿是指圧を確立して、主に背骨の疾患をメーンに治療およびSHIATSUプラクター(指圧治療師)の養成に日々を送る。

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