週刊あはきワールド 2016年8月3日号 No.484

◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例 File.28-1

鍼灸・漢方・養生の視点から皮膚病を治す!(1)

~皮膚病の病態とその治し方~

千葉大学医学院和漢診療学非常勤講師 和光治療院・漢方薬局 平地治美 


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 「皮膚病が上手に治せるようになったら一人前の漢方家」と言われるように、漢方における皮膚病の治療は難しいものであるとされている。しかし、「皮膚は最大の臓器」であり「皮膚の状態は内臓の表れ」であることを思うと、皮膚病の治療=他の疾患の未病治にもなり得るし、臨床家の腕を試されるやりがいのある疾患でもある。

岡山皮膚科で診察を見学したときの目から鱗の体験

 私は薬科大学を卒業後、中医学系の漢方相談薬局に入社した(恥ずかしながら当時、漢方に中医学、日本漢方など流派があることなど全く知らなかった。中医学を否定する先生もいまだにいるようであるが、処方構成を把握し大まかな病理を捉えるには中医学は便利なものだと思う)。

 会社のシステム上、数週間の研修を受けた後すぐに店頭に立ち漢方相談をし煎じ薬を調剤するようになった。今考えると当時担当させていただいた患者さんには大変申し訳ないことをしたと思うが、しょっぱなから臨床の現場に立つ機会を得た。メチャクチャな弁証論治であったが、無知と経験不足をやる気で補い必死でやっていたせいか、毎月データで算出される患者さんからの支持率や客単価などの成績は全社的にも常にトップクラスであった。そして術者の気で、ある程度の疾患はなんとかなってしまうことが多々あることを、この時期の体験から学んだ。

 しかしビギナーズラックは長く続かず、経験を積むにつれて難しい症例が増え、治せないどころか悪化させてしまうというケースも出てくるようになってしまった。その代表が難治性のアトピー性皮膚炎等の、こじれた皮膚病であった。

 「煎じ薬を一服服用したとたん、痒みが全身に広がった」と怒鳴り込まれ、真っ青になった経験もある。漢方薬は長く飲まないと効かないというイメージがあるかもしれないが、このように成功も失敗も即座に反映されることが多々ある。特に皮膚病における誤治は即座に結果が出ることが多い。

 ちょうど中医学を始めて2年ほど経った頃、中医学のみでの治療に行き詰まった私は密かに日本漢方を勉強し始めた。寺師睦宗先生に師事し、傷寒論、金匱要略をはじめとする古典を学び始めた。

 そしてやがて寺師先生の診療所で実際の臨床を見学させていただく機会に恵まれた。中医学とはまったく違うものの見方にはじめは戸惑ったが、学ぶことは多かった。

 「なんだ、漢方薬の話か、鍼灸師の自分には関係ない」と思わないでほしい。鍼灸だけ勉強していては病理を理解することができず、治療が行き当たりばったりになりがちになるし、養生の指導もできないからである。

 しかし寺師先生は不妊症専門だったので、皮膚病の患者が来ることはなく、私は相変わらず皮膚病を上手く治せなかった。そのことを先生に相談したところ、

 「皮膚病は難しいよ、不妊症と同じで治った、治らないがはっきりと結果に出るからね、ごまかせないしな! 私はもう不妊症の患者しか診ていないからね、皮膚病の患者は来ないから。すごく上手な先生を紹介するからそこで勉強してきなさい」

と言って紹介状を書いてくださった。それから毎週、蒲田の岡山皮膚科において、岡山誠一先生の診察を見学させていただくことになった(岡山皮膚科は岡山先生の引退により閉院)。

 岡山皮膚科には1日200人前後の患者が来院していた。ほぼ全ての患者に対してツムラ等の漢方エキス剤が処方されていた。先生の方針から保険診療で処方できるもので治療し、自費の煎じ薬は処方していなかった。漢方は煎じ薬でないと効かないと思っていたので、目から鱗であった。

 岡山先生は西洋薬を使うことはほとんどなく、白癬菌(水虫)には抗菌剤を処方していたが、ステロイド剤が処方されることはなかった。お化けのようなひどい状態の患者さんも多く、ここまでひどい症状が漢方、しかもエキス剤だけで治るのだろうか…という疑念が湧き上がってきたが、そんな患者さん達がみるみるうちに良くなっていくのを目の当たりにした。

 どんな秘伝処方を使っているのかと思いきや、当帰建中湯、五苓散、桂枝茯苓丸など中医学による弁証ではありえない処方が上位を占めていた。現在私の治療は岡山先生から学んだことを核にして鍼灸治療をプラスすることが多いが、鍼灸だけ、漢方だけ、養生だけという症例もある。学んだこと全ては書ききれないのでその中から数例を紹介させていただく。

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