週刊あはきワールド 2016年8月10日号 No.485

【熊本地震】鍼灸マッサージボランティア・レポート その5

熊本県西原村での活動を終えて

災害鍼灸マッサージプロジェクト代表 三輪正敬 


 

施術する参加者
 「行政職員より、災プロ(災害鍼灸マッサージプロジェクト)は必ずこの福祉避難所の担当にしてくださいと連絡を受けています」

 活動中盤、ボランティアの活動場所を振り分けている熊本県西原村ボランティアセンター職員からの言葉である。

 これまで通り、避難所の患者さんはもちろん、避難所担当の行政職員、ボランティアセンター職員、現場の他の医療職との信頼関係を築きながらの災プロによる熊本地震支援活動は、8月1日、西原村の構造改善センター避難所、高齢者など事情のある方を集約した村に唯一残る福祉避難所からの撤収をもって終了した。

 もちろん、これ以上の支援が不要というわけではない。避難所はいまだに運営されており、仮設住宅へ移住された方々の暮らしも始まったばかり。さらには倒壊したままの姿で残る家屋の並ぶ地域もある中、引き続き様々な支援が必要とされている。

 例えば物資支援ボランティアで、東日本大震災の折、避難所から遠く離れた小さな集落や個人宅へ足を運び、直接、必要な物資を尋ねてそれを提供する活動を個人でされていた方がいるが、支援はいろいろなかたちがあり、災プロは災プロの基準で活動、撤収している。

災プロの主な3つの撤収理由

 その災プロの今回の撤収理由は以下の3つであった。

1、仮設住宅への入居完了の予定
 7月8日発行の西原村広報号外にて、村内の仮設住宅が完成し、7月末には入居が完了する見込みが告知された。被災された方々の自立が進む中、これに協力させていただくには、外部からの支援者である私たちによる継続的支援は終了する時期と判断した。

2、避難者の受診環境
 地元や周囲自治体の医療機関への受診継続の予定がたっている患者さんがほとんどとなった。つまり、病院が開いていないとか、交通手段がないという声が聞かれなくなった。受診環境の面で地元の方々に日常が戻ってきている様子から、終了は妥当と判断した。

3、地元の鍼灸マッサージ治療院
 これは上記の1と2に挙げた内容を支える主な理由である。発災時点で西原村には、私たちが調査した限り、協働している「からだ学集塾」の1軒のみが開院していた。災プロが活動を続けることで増えていく鍼灸受療希望者が、もしもこの後を引き継いでくださる地元の鍼灸マッサージ施術のキャパシティを越えた場合、過度な支援となる可能性が高いため、避けるべきと判断した。私たち災プロの活動目的は鍼灸マッサージの普及ではない。被災地ができる限り元の通りになること、被災された方々にできるだけ日常が戻ることである。もともと鍼灸マッサージの受療率の決して高くなかった西原村において、2カ月半の災プロ活動を通した受療者は人口の1~2%にのぼっていた。私たちが撤収した後、このようなコミュニティの中にあるたった1軒の地元の治療院へ負担がかかることを避ける必要があるのでは、と考えた。

4つ目の理由をあげれば…

 このような3つの理由は、東日本大震災、関東東北豪雨災害と経験を積んできたスタッフによる合議により整理されたが、現地に赴けば新たな課題も目につき、特に2011年に仮設住宅での活動経験を持つ災プロとしては、さらなる活動の延長も視野に入れていた。それでも撤収した理由を4番目として挙げれば、それは自分たちにあまり無理がかからないように、ということだろう。


被災された方々に寄り添う
 災プロスタッフのほとんどは関東在住であり、参加してくださったボランティアとともに、それぞれの日常の仕事が休みとなる週末、飛行機で活動地へ向かっていた。

 もちろん現地入りするスタッフはできるだけ交代しながらではあるが、後方支援業務を含めると休日がないに等しい生活となり、撤収の予定は早期に立てなければ自分たちの日常生活へ支障が出かねない状況であった。

 ボランティアは日常を削らなければできないが、自分たちがあまりに無理をしては良い支援ができなくなる。支援は続けようと思えばニーズは尽きないが、地元のことを思えばこそ、責任や質を伴った活動のまま終えるための引き際がある。これは今までの活動でも同様で、被災された方々の顔を浮かべれば常に後ろ髪を引かれる、苦渋の決断となっている。
 
 重ねて、になるが、これらは外部からのボランティアである私たち災プロの撤収基準であり、今後も活動を続けていかれる地元の鍼灸マッサージボランティアや、他業種の基準とは異なることをご理解いただきたい。

責任や質を伴った活動

 上に「責任や質を伴った活動」と書いた。続けて、この点について。

 冒頭に挙げたボランティアセンター職員からの言葉は、災プロが被災地における治療活動に対して持つ責任感が伝わったからこそ発せられたと考えられる。


保健師さんへの申し送りを行うスタッフ
 災プロは活動のすべてを「ただ被災地のために」をルーツに行っている。被災地にとっては一時的なボランティアでしかない私たち、鍼灸マッサージという一医療職種でしかない私たちだからこそ、避難所に常駐する保健師や看護師と連携を作り、担当した患者さんたちの気になる症状を伝え、自分たちが不在の間もフォローしてもらえるようにする。実際、報告先となった日赤の看護師は「あらゆるところからの情報が大切」と鍼灸マッサージ師からの情報を歓迎していた。

 単発の活動にしないのも、自分たちの治療のその後に責任を持つためである。

 西原村での活動では、災プロではない単発の鍼灸ボランティアの起こした内出血のインシデントの相談を災プロが受けた。これは2011年にもあったことだが、このような場合私たちは、所属は関係なく、鍼灸師という医療職種として謝罪し、自然消退することなどを説明、ご理解いただいている。


ボランティアのお子さんが受付に参加
することでいっそう和やかな雰囲気に
 インシデントを起こされた方も「被災された方の力になりたい」という思いからのことと思われ、この点では敬意を表するが、単発であればこそ施術を受けた方へ連絡先を残したり、管轄の保健師さんへ施術した方々の一覧を残していくなど、「自分が帰った後」までの思いも込めることができれば、より良い支援となったことであろう(災プロが唯一、単発の活動をした2012年の福島県南相馬市での活動時は、地元総合病院へ連絡をとれるようにしていた)。

 今回、熊本県内で活動する鍼灸マッサージボランティアの活動地図の作成も試みた。

 目的は、支援の手薄な地域を明らかにすることであり、ただ被災地のため、所属を超えて連携をとっていくことが大切と考えてのことである。様々な団体や個人があっても、目的が被災地のためであればかえって支援に多様性が生まれ、被災地には重層的な支援となるだろう。そのためにも、規模の大小に関わらず、被災地支援に関わる鍼灸マッサージ師たち全員が何らかの連携を保っていくことは、今後の課題かもしれない。

一日も早い復興と今後の無事を祈って

 最後になるが、参加してくださったボランティアの先生方は皆、少しでも被災地に寄り添おうとする非常に丁寧な素晴らしい先生方であった。また、今回も共に奮闘したスタッフの方々の、現地でまたは後方支援での蔭ながらの謙虚な働きは、いつものことながら尊敬に値するものであった。そして特に西原村で開業している「からだ学集塾」の山岡縁先生は、この方なしには西原村での活動が始まらなかったほか、日々の活動で大変お世話になった。他にもお世話になった方々は大勢おり、皆様へ、この場を借りて厚くお礼を申し上げたい。


ボランティアセンター前で


















 災プロが関わったのは偶然のご縁から熊本県西原村となったが、熊本地震による被害は熊本県、大分県など広範囲にわたっている。また、災害により大切なものを失った方々の傷は容易に癒えるものではない。今回の熊本地震により被災された方々の一日も早い復興と、今後のご無事を心からお祈り申し上げる。
 
 
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