週刊あはきワールド 2016年8月17日号 No.486

【新連載】腹診の観察から見た「毒」と「邪気」の診察と鍼灸治療の実際 第1回

腹診とは(1)

~はじめに・腹診の歴史~

いやしの道協会顧問 大浦慈観 


 筆者が十数年前に初学者向けに作成した「腹診の観察から見た、毒と邪気の診察の目安」という腹診の手引書を某鍼灸専門学校の授業に用いてきましたが、これまでの臨床実践経験を踏まえて、この手引書を思い切って書き直そうと思い立ちました。今号から少しずつ紹介し、読者諸氏を腹診の世界にいざなおうと思いますので、しばらくお付き合いください。

1.はじめに

 腹診は東洋医学における重要な診察法の一つです。日本漢方においては、問診・脈診・舌診とともに、腹診は漢方の処方を決定する重要な診断基準であることは言うまでもありません。にもかかわらず、鍼灸治療においては腹診をどのような基準により行い、何を確認し、どのように治療に結びつけるのか、明確な書物は見当たりません。

 そこで、腹診の基準となる事項を整理したうえで、実際の腹診から得られた情報をもとに、体質のあり様や病態の把握をすすめ、体全体をイメージとしてとらえて、どのように鍼灸治療を用いてアプローチするかといった、戦略戦術を立てる上での基礎資料を作成しようと試みました。

2.腹診の歴史

 歴史的にいうと腹診には、傷寒論系の腹診と、難経系の腹診、そして内経系の腹診とがあります。傷寒論系の腹診は、江戸期に発展整理され、現在の日本漢方にて使われている腹診法です。腹診によって項背強急・心煩・心下痞鞕・胸脇苦満・臍下血塊・臍下不仁などが診断されれば、それに応じた漢方薬の処方や薬味の選定が決まります。

 こうした漢方家の腹診は、江戸前期に曲直瀬玄朔・久野玄悦・味岡三伯・草刈三越らにより始められ、江戸中期には吉益東洞ら古方漢方家たちにより発展され、江戸後期になると尾台榕堂や奥田鳳作ら(古方派)や、和田東郭や浅田宗伯ら(折衷派)により整理され、昭和期の漢方復興運動の中で大塚敬節・矢数道明らにより、日本漢方の腹診として形成されていきました(図1)。
 

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