週刊あはきワールド 2016年8月24・31日合併号 No.487

鍼灸学生の研修奮闘物語 File.4

Student.SeのBSL(Bed Side Learning )Diary(4)

~「日本中医学会熊本支援プロジェクト」東洋医学編その1~

鍼灸学生3年 平岡遼 


 
 前回は熊本でのボランティアで感じたことや、見逃してはいけない症例を西洋医学的な観点でお伝えしました。そこで今回は同じ症例について東洋医学的観点から見ていこうと思います。

 本稿では、東洋医学では患者さんの「元気」をはかったり、「環世界」を紐解いたり、「七情」を慮ることが弁証のきっかけになることを学びます。一つの症例でたくさんの学びがあるのがカンファレンスの長所です。今回は特にいろいろな方向に話題が広がりました。まさに、実際のカンファレンスそのままを掲載しています。読者には読みづらいところが多々あるかと思いますが臨場感を味わっていただくことで、平にご容赦ください。

 また、東洋医学編と銘打ちながらも、上記の理由により、話は東西折衷の内容になってしまいました。次稿ではさらに詳細に東洋医学的カンファレンスが展開していきます。

座談会メンバー

ともともクリニック院長 木村朗子
TOMOTOMO(友と共に学ぶ東西両医学研修の会)代表 石川家明

 前回の記事でも取り上げた肺炎疑いの患者さんですが、今回は東洋医学的所見をメインに見ていきたいと思います。

症例提示)74歳 男性 Nさん
3~4カ月前にカゼをひき、その後咳嗽が続いている。喀痰あり、白色。
毎年、夏場は食欲が落ち、夏に体重はわずかに増減する。今年はいつもより体重が減っているかもしれないと感じているが、測定していないので詳細はわからない。
震災前までは大工をしていたが、今はボランティアをしながら、自らは全壊した自宅の解体作業を行っている。数日前に壊れた家の片付けに行ったときに雨に降られてから咳がひどくなっている。夜中に咳で目覚めることがある。時折笑みは見せるが、声は弱く小さい。

脈診:右弦滑、左渋
舌診:舌大、黄膩苔、舌下静脈怒張

■どうやって診ていくのか? アントニオ猪木に学ぶ

平岡先生、どこから診ていったら良いのでしょう?

石川前回の話をもう一度思い出してみましょう。どこから診ていったら良いと思いますか?

平岡うーん…。声、ですか?

石川そうですね。一番気になったのは声が小さいことでしたよね。声をみるというのは元気を見るということです。「元気ですか~!」はアントニオ猪木だけの専売特許ではなく、我々が昔から使ってきた言葉なんですよ。

平岡声が小さいということは一番大事な原気(元気)がないことを示唆しているんですね。

石川つまり気虚ということですね。気虚といったら何を考えますか?

平岡肺気虚、脾気虚、腎気虚でしょうか。

石川間違ってはいないけど教科書的ですね。もっと自然にイメージを浮かべてみましょう。では日常生活で元気がない人はどんな人でしょうか?

平岡失恋した人とか…。

石川そうそう、そんな調子です。財布を落とした人もきっと元気がないでしょうね。では同じように医療に置き換えて考えみましょう。

平岡働きすぎて疲れている人、ご飯が食べられていない人、あとは病み上がりや長い間患っている人などでしょうか。

石川いいですね。東洋医学の用語でいえば、労倦、飲食不節、久病になりますね。東洋医学の用語も日常生活でイメージできるようにしておきましょう。では、それぞれの人はなんで元気がないんだろう?

平岡働きすぎの人はエネルギー、つまり気を使いすぎて消耗してしまったからです。慢性病、病後の人も、病と戦うために正気を消耗してしまったために元気がなくなっています。ご飯が食べられていない人は、食べ物から気を取り入れられなくなったからだと思います。

石川そうですね。このような考えは「病態生理から考える」といいます。洋の東西問わず患者の状態を把握するためにとっても大事です。中医学では「病因病機」と言っています。さて、それらをさらに臓腑と結びつけて考えてみましょう。自然界の清気を取り入れられないのが肺気虚、食べ物からの後天の気をうまく生成できないのが脾気虚、もともとの気が少ない人や貯金を使い果たしたのが腎気虚というんだったよね。この3つの気の出処で気づくことはありますか?

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